ビジネスモデルが法令に違反するかどうか明らかではない部分があります。対応方法について、主にグレーゾーン解消制度について教えてください。

1 ビジネスモデルの法令違反リスク

起業が新しいビジネスを行う場合、そのビジネスモデルが法規制に違反するかどうかが明らかではない場合があります。
このような場合、法令違反であると評価されるリスクを負ったままビジネスを実施することもあり得ます。

しかし、もし、ビジネスモデルに法令違反であると評価された場合には、行政処分を受けたり、刑罰や行政罰を受けたりすることがあり得ます。
また、仮に、法令違反であるという評価が明らかにならなかったとしても、法令違反があるかどうかが不明確なままであれば、資金調達を受けることが難しくなったり、上場することができなくなったりします。
他にも、ビジネスモデルに法令違反の恐れがあることが指摘されれば、利用が躊躇されてビジネスを成長させることができなくなることもあります。


そこで、ビジネスモデルに法令違反があるかどうかを明確化することが重要といえます。

2 法令違反があるかどうか不明である場合の対応方法

ビジネスモデルに法令違反があるかどうかが不明確である場合、一般的には、以下のような対応方法があり得ます。

①弁護士等の専門家に見解を聞く
②行政庁に問い合わせて聞く
③ノーアクションレターを利用する
④グレーゾーン解消制度を利用する

①弁護士等の専門家に見解を聞く

弁護士等の専門家は、法令や同種事例を調査したうえで、適法か否かについて見解を提供します。
しかし、それはあくまでも過去の例を踏まえた見解に過ぎないので、行政庁や裁判所の評価の仕方と異なる場合があります。
このため、見解が分かれそうな事案であれば、見解を踏まえても上記のリスクを解消できないことがあります。

②規制の監督機関に問い合わせて聞く

監督機関に問い合わせをして見解を聞くこともあり得ます。
電話等で問い合わせると教えてくれることがあります。
ただし、法令の評価について見解が分かれるような事案である場合には、やはり担当者の一見解に過ぎないものであるので、上記のリスクを解消することができるものではありません。

③ノーアクションレターを利用する

ノーアクションレターとは、行政庁に対して、法令の適用があるのか否かについて正式な確認をすることができる手続です。
この回答は正式なものであるので、これによって適法という評価を得ることができれば、通常は問題がないといえます。
ただし、ノーアクションレターでは、照会することができる法令の範囲を行政庁が指定することになっています。
つまり、照会することができる法令が限定されています。
具体的には、許認可等の申請に対する処分の根拠であり、罰則の適用対象になるものや、企業に対する不利益処分、義務を課し権利を制限するものなどです。
違反するかどうかが問題になる法令は、このような法令であるとは限りません。

また、ノーアクションレターの照会先は、法規制を所管する行政庁です。
これは後述するグレーゾーン解消制度とは異なるものであり、グレーゾーン解消制度と比較して使いづらい点ともいえます。

④グレーゾーン解消制度を利用する

グレーゾーン解消制度は、ノーアクションレターと同様に、行政庁の法令に対する見解について、正式に回答を得ることができる手続きです。
ただし、グレーゾーン解消制度は、ノーアクションレターとは異なり、法令の範囲に制限がありません。
このため、適用の可能性があり得る法令であれば、どのような法令であっても照会を求めることができます。

また、ノーアクションレターは照会先が法規制を所管する行政庁でしたが、グレーゾーン解消制度は、照会先が事業を所管する行政庁です。
そして、この事業を所管する行政庁は、照会事項が他の行政庁の所管である場合には、そこに確認をして回答を求めることになります。
企業は、事業を所管する行政庁とやり取りを行い、指導・解説等を受けることが期待できます。

3 グレーゾーン解消制度の留意点

以上のとおり、法令違反があるかどうかについて明確化する必要がある場合、グレーゾーン解消制度を利用することが適切といえます。
しかし、グレーゾーン解消制度には以下のとおり留意点があります。

①利用時期

グレーゾーン解消制度は、「新事業活動」に関して利用できるものであるので、まだ実施していない事業についてのみしか利用できません。
このため、グレーゾーン解消制度を利用して照会を受けるまではそのビジネスを十することはできません。

②問題になる法令を特定する必要がある

グレーゾーン解消制度は、法令等の適用があるのか否かを照会するものです。
いかなる法令等の適用があるのかを特定してくれるものではありません。
このため、企業自らにおいて問題になり得る法令等の規定を特定しなければなりません。

③必要な時間

グレーゾーン解消制度は、法令上は申請から1か月以内に回答が得られることになっています。
しかし、実際には、適切に申請を行うために行政庁からの指導等を受けることになるので、1ヶ月を超えて時間がかかります。

④適法であることが確実になるものではない

グレーゾーン解消制度は、行政庁の公式な見解を得られるものです。
しかし、法令の解釈適用は裁判所が行うものであるので、理論的には、裁判所が行政庁と異なる見解に基づいた判断をする可能性があります。
ただし、行政庁の見解を信頼して行った行為については責任を負う可能性は低くなるといえます。

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