リファラル採用の導入を検討しています。注意点を教えてください。

1 はじめに

リファラル採用とは、従業員が友人や知人を会社に紹介することにより行う採用をいいます。
このような採用の方法は、会社の風土を把握した従業員がその友人や知人の紹介をするものであるため、ミスマッチが起こりにくいこと、従業員自らが紹介を行うため採用コストが抑えやすいことなどのメリットがあります。

リファラル採用を積極的に促すために、会社が、従業員が紹介した人材を採用した場合には、会社が従業員に金銭を支払うこともあります。
このようなリファラル採用は、広く行われているところではありますが、法律上の手当をせずに進めてしまうと法令に違反してしまうおそれがあります。

2 リファラル採用の位置づけ

人材の紹介に関する法令として職業安定法があります。
リファラル採用は、採用の主体である会社の被用者が紹介を行うものであり、第三者に募集を委託するものではありません。
このため、被用者以外の者をして労働者の募集に従事させる「委託募集」(職業安定法36条)には該当しません。
このため、「委託募集」において必要とされる許可等は必要ありません。

ただし、被用者として行うべき業務とは別に人材の紹介を行わせるとすれば、許可が必要な職業紹介業や委託募集に該当してしまうおそれがあります。
このため、被用者として行うべき業務として雇用契約上の位置づけを明確化する必要があります。
(具体的な方法は後述します。)

3 報酬の供与の禁止

職業安定法上、労働者の募集を行う者は、被用者に対して、人材の紹介に関する報酬を与えてはならないとされています(職業安定法40条)。
しかし、これには例外があり、「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」は許されるものとされます。
このため、従業員に対して、人材紹介に関する何らかの金銭を支払うとしても、「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」に該当するように設計しなければならないといえます。
また、この金額についてもあまりに高額な金額になる場合には、その従業員が被用者としての立場を超えて独自に有料職業紹介業を行っていると評価されてしまうおそれがありますので、高額になりすぎないように設計する必要があります。
(具体的な方法は後述のとおり。)

4 対応すべき事項①(業務上の位置づけ)

前記のとおり、被用者として行うべき業務として雇用契約上の位置づけを明確化する必要があります。
具体的には、被用者が人材の採用業務を行うことを就業規則等において明確化するべきといえます。
例えば、「社員は、会社の採用方針に従って、適切な人材を会社に紹介することその他採用活動に協力する。」などの規定を設けておくとよいです。

5 対応すべき事項②(賃金等としての位置づけ)

前記のとおり、従業員に何らかの金銭を支払う場合であっても、それが「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」に該当しなければなりません。
これを明確化するために、以下の点を留意する必要があります。

(1)賃金としての位置づけを明確化する

就業規則や賃金規程において、紹介によって支払われる金銭の位置づけが賃金の一部であることを明確化するとよいです。

(2)支払いの処理

従業員に金銭を支払う場合には、給与明細に記載し、また公租公課に関する処理も同じようにするとよいです。

6 対応すべき事項③(対価の支払い基準)

対価の支払いの基準については就業規則や、それに付随するリファラル採用規程等を設けて定めるとよいです。
対価の支払金額については、高額になり過ぎないようにする必要があります。
この基準は明確なものはなく、またケースバイケースな判断が必要ではありますが、一般的には30万円以内で設定されることが多いところです。

Category:労働問題 , 雇用問題

企業向け顧問弁護士サービス
企業を対象とした安心の月額固定費用のサービスを行っています。法務担当を雇うより顧問弁護士に依頼した方がリーズナブルになります。