株主総会資料の電子提供制度とは何ですか。

1 会社法が改正されます


 2019年の臨時国会で、会社法が改正されました。その主要な改正項目の1つが、株主総会資料の電子提供制度です。本制度は、改正法の公布後3年6カ月以内に施行されることになっており、施行まで時間がありますが、余裕をもって準備できるようにここで紹介します。

2 株主総会資料の電子提供制度


 株主総会資料の電子提供制度とは、会社が株主総会資料を株主に対して書面ではなく電磁的方法(インターネット上の会社ウェブサイトに掲載する方法等)を用いて提供する制度のことを言います。
 現行法上においても、株主の個別の同意を得れば電磁的方法による提供は可能だったのですが(現行会社法301条2項)、本改正により、株主の個別の同意を得ることなくほぼすべての資料を電子提供することができるようになりました。
 この電子提供制度は、上場会社非上場会社を問わず、定款に電子提供措置をとる旨の定めを置くことによって採用することができます(改正会社法325条の2)。もっとも、振替株式を発行する上場会社については、電子提供制度の採用が義務付けられています。

3 電子提供制度を採用した株主総会の手続


 電子提供制度を採用した株主総会の手続は次のようになります。
①株主総会の日の2週間前までに株主総会に関する事項を記載した招集通知を株主に対して発送します(改正会社法325条の4、299条1項)。
②株主総会の日の3週間前の日または招集通知を発した日のいずれか早い日から株主総会の日後3カ月を経過するまでの間、継続して株主総会参考書類記載事項や議決権行使書面記載事項、計算書類及び事業報告記載事項、連結計算書類記載事項等の事項を電子提供措置に供します(改正会社法325条の3第1項)。
 また、電子提供制度を採用している会社であっても、従来どおり①②の記載事項をすべて記載した招集通知を紙媒体で発送することも可能ですが、当該発送はあくまで会社が任意で行うものであり、当該発送により、②の手続が免除されるわけではないので注意してください。

4 株主による書面交付請求制度


 株主の中には、インターネットの利用環境に乏しく電子提供を受けられない者がいることが想定されます。改正会社法では、このような株主に配慮して、株主が請求した場合には、招集通知の発送に際して、電子提供措置事項を記載した書面の交付を会社に義務付けることとし、株主による書面交付請求権を認めています(改正会社法325条の5)。
 会社は、株主総会の基準日までの間に書面交付請求が行われた場合、請求を行った株主に対して、招集通知の発送に際して電子提供措置事項を記載した書面を送付しなくてはいけません。
 また、書面交付請求は、株主が1回行えばその後の全ての株主総会でも有効になります。具体的には次のような取り扱いになります。


(例)株主総会の基準日が3月末日で定時株主総会が6月開催の会社の場合
(1)株主が2020年2月中に交付請求をした場合、会社は2020年6月の株主総会に関して書面を交付。2021年以降の株主総会についても継続。
(2)株主が2020年4月中に交付請求をした場合、会社は2021年6月の株主総会に関して書面を交付。2022年以降の株主総会についても継続(2020年6月の株主総会については交付請求が基準日を過ぎているため書面交付不要)。

 なお、会社は書面交付請求を定款により排除することはできませんが、交付請求の日から1年間を経過した後に株主に対し個別に催告し、株主から異議が述べられない限り、書面交付請求を失効させることができます。

Category:会社法

企業向け顧問弁護士サービス
企業を対象とした安心の月額固定費用のサービスを行っています。法務担当を雇うより顧問弁護士に依頼した方がリーズナブルになります。