相殺条項はどのように規定すればよいですか。

 相殺とは,当事者間で互いに債権を有しあっている場合に,それぞれの債権を対当額で消滅させることです。

 例えば売買契約の売主が買主に対して代金債権300万円を有し,買主が売主に対して損害賠償債権100万円を有している場合に,両債権を相殺すると,売主の買主に対する代金債権200万円が残ります。

 日本法の下では,弁済期が到来している同種の債権であれば,いずれか一方当事者が他方当事者に対して相殺の意思表示をして行うことができます。しかし国際取引において適用される法によっては,契約上の定めがなければ相殺を行うことができない場合がありますので,相殺が可能であることを明確にしておくために記載しておくことをおすすめします。条項例は以下のとおりです。

  Buyer shall have the right to set off against amounts which may become payable by Buyer to Seller under this Agreement or otherwise, any amounts which Seller may owe Buyer.

 買主は,買主が売主に対して本契約上またはその他により支払義務を負う債務でもって,売主が買主に対して負う債務と相殺する権利を有する。

 反対に,当事者が一方的に相殺することを禁止する場合もあります。

 例えば,売買契約上で,買主が売主の商品に欠陥があったと主張して,代金支払債権と損害賠償債権とを相殺すると主張したとします。この場合,本当に売主の商品に欠陥があったかどうかは,最終的には裁判所で解決することになりますが,商品欠陥の有無が裁判所で争われている間,売主は,買主に対して代金の支払を求めることができない状態に陥ってしまいます。

 このような事態が生じるのを避けるため,契約書の中で,買主が,売主の代金支払債権を他の買主の債権と相殺するのを禁止することを定めておくのです。条項例は,下記のとおりです。

  Except as provided otherwise herein, Buyer shall not be entitled to set off or retain any amount from amounts due to Seller.

 本契約で別段の定めがない限り,買主は,売主に対して支払うべき債務を相殺し,または支払いを留保する権利を有しない。

  Buyer shall have no right to set off, retention or reduction unless the underlying counterclaims have been conclusively determined by a court or expressly acknowledged by the Seller.

 買主は,売主に対する反対請求権の存在が裁判所によって認容され,または存在することが売主にも明らかである場合を除いては,債務を相殺し,支払を留保し,または支払額を減少させる権利を有しない。

 ところで,相殺の対象となる債権は弁済期が到来しているものでなければならないとされています。相殺を行うというのは,強制的に自己の相手方に対する債権を実現することと同じだからです。

 相手の信用状況が悪化している場合など債権回収を急がなければならないときに,相殺のための自己の債権が弁済期未到来だと,相殺を行うことができません。このような事態を避けるため,契約において,信用不安などの一定の事由が生じた場合には期限の利益を喪失して直ちに弁済期が到来することを定めておくことで,より簡単に相殺を行って債権債務関係を清算することができます。

 

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