英文契約書の事情変更条項が適用されるのはどのようなケースでしょうか。また、効力について教えてください。

契約締結後,経済変動など予測しなかった事態が生じ,契約内容どおりの履行を行うことが難しい状況に陥る場合があります。そのような場合に備えて,以下のような条項が規定されることがあります。このような条項を,事情変更条項やハードシップ条項といいます。

The parties acknowledge that events not foreseen by them at the date of this Agreement may arise during the term of this Agreement. Should such events, including but not limited to events of an economic, monetary, fiscal or political nature, affect directly or indirectly the execution of this Agreement, creating an unreasonable advantage to one party, or causing serious harm to the other, the injured party shall inform the other party by written notice.

The party shall meet within thirty(30) days after the date of such written notice, in order to seek an appropriate solution of the protection of their respective interest and for the continuation of this Agreement.

両当事者は,本契約期間中,契約締結日に予測しなかった事態が生じる可能性があることを了解する。そのような事態(経済,通貨,財務または政治上の事態を含むがこれに限られない)によって本契約の履行に直接的または間接的に影響を与え,一方当事者に不合理に有利となり,または他方に深刻な損害を与えた場合,損害を被った当事者は,相手方に対して,書面により通知するものとする。

両当事者は,上記書面による通知の日から30日以内に,両当事者の利益を保護し本契約を継続するために適切な解決を図ることを目的とした協議を行うものとする。

事情変更となる場合とは?

 例えば売買契約締結後,原材料の価格が高騰したため契約書の販売価格では販売できなくなった場合などです。この場合売主は,契約内容どおりの価格で販売することが不可能ではないので,なお債務の履行義務を負います。しかし,それでは不当に売主に不利・買主に有利な結果となってしまうので,本条項によって契約内容を再検討することを定めておくのです。このように、当事者間で定めたトリガー(条件)が成就すれば(満たされれば)事情変更が生じたものとして扱われます。

 なお,天災地変や戦争,革命,法令の改廃といった不可抗力(Force Majeure)によって債務の履行ができなくなった場合は,債務者は免責されますので,本条項は問題となりません。

条項の効果は?

 上記条項例では,事情変更が生じた場合,当事者は30日以内に協議するとだけ定めています。協議を経ても,両当事者が契約条件を変更することに合意できなければ,債務者はやはり従前の契約内容どおり,債務を履行する義務を負います。その意味では本条項は精神的な条項ですが,具体的に条項として契約書に定めておくことで,相手に対して誠実な交渉態度をとることを期待するものです。

 また,当事者間において具体的にトリガーを定めたものであったとしても,法令に抵触するような場合(消費者保護に関する法令で無効とされているケース)や,内容があまりにもフェアでない場合には事業者間であったとしても効力が認められないことや,後々効力を争われる可能性があります。

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