当社ウェブサイトで、利用規約を用いた契約の申込手順を作成するにあたり、注意すべき点はありますか。
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申込者が事前に利用規約を確認できる機会を確保しておかなければ、利用規約が契約内容とならない点に注意してください。
解説
「利用規約」(「利用約款」、「サービス規約」など呼び方は様々です。)とは、多くの顧客と契約を締結することが予定されているため、あらかじめ一方的に内容を決めてしまっている契約条項をいいます。御社が、申込者との間で、御社が定めた利用規約に基づき契約を締結することに合意した場合、利用規約どおりの内容の契約が成立します。
しかし、申込者が事前に利用規約を確認できる機会を与えられていなかった場合には、利用規約どおりの内容の契約が成立したとは認められない可能性があります。御社としては、最低限、申込者が利用規約を閲覧して内容を確認したうえで契約締結することができる状態を確保しておかなければならないということです。経産省のガイドラインでは、ウェブサイト上での契約の場合に、サイト利用規約が契約内容に組み入れられるためには、次の2つの条件が必要とされています。
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- 申込者がサイト利用規約の内容を事前に容易に確認できるように適切にサイト利用規約をウェブサイトに掲載して開示されていること
- 申込者が開示されているサイト利用規約に従い契約を締結することに同意していると認定できること
具体的には、ウェブサイト申込手順中に、利用規約を明確に表示して閲覧させるステップや、利用規約へのリンクを表示して同意クリックを要求するステップがあれば、上記2つの条件を満たすものとされています。一方で、ウェブサイト中の目立たない場所に利用規約のリンクを張り付けているだけの場合は、上記2つの条件を満たさない可能性が高いでしょう。
利用規約全文を表示して閲覧させたうえで同意を求めており、利用規約が取引条件となっていることが明らか
利用規約へのリンクが明瞭に設けられ、同意も求めており、利用規約が取引条件となっていることが明らか
目立たない場所に利用規約リンクが張られているだけで、同意も求めておらず、利用規約が取引条件となっていることが明らかとはいえない
申込手順中に同意クリックの1ステップを加えることでも、一定のコンバージョン率低下が予想されますから、どのように申込手順を構築するかにあたっては、申込者の利便性と法律上のリスクとのバランスをとる必要があるとは思います。しかし、申込者が利用規約を確認する機会をきちんと与えておかないと、契約内容から重要な取引条件が漏れてしまい、御社が、全契約者に対して想定外の契約責任を負ってしまう可能性があることに注意してください。
なお、現在(May. 2014)改正作業中の債権法中間案では、利用規約・約款等を用いて行われるのが通常の取引でも、当該利用規約・約款を用いることを公表しておくことが必要との見解が示されており、申込者に対して利用規約を確認する機会を確保することが必要という考え方が、今後、民法上のルールとして定着してゆくものと思われます。
おって、利用規約どおりの内容の契約が成立したとしても、そこに含まれる個々の契約条項の内容によっては、その効力が否定され、または制限されてしまう場合があります。この点については、契約相手方が事業者の場合(Q当社では個人事業者向けに...。)と消費者の場合(Q当社は個人向けにECサイトを...。)の、それぞれのQ&Aをご覧ください。
参考
経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則(平成25年9月)」(i.22頁以降)
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