当社の取引先は民事再生を申し立てるようです。当社は売掛債権を有していますが、少額です。民事再生の手続が開始した後、どのような場合に少額債権の弁済を受けることができるのでしょうか。

民事再生手続が始まる前に発生した債権は再生債権といって、再生計画が成立してから、これに従って弁済されます(民事再生法85条)。但し、少額債権については、下記の場合に、再生計画成立前に弁済されることがあります。

1 手続の円滑な進行のための少額債権の弁済

個々の再生債権者は原則として等しく再生手続に参加する権利を有していますので、債権額が少額の再生債権者が多数ある事案では、手続が煩雑になり費用の負担も大きくなります。他方で、少額の再生債権を弁済しても、一般には他の再生債権者の権利に実質的な影響を及ぼしません。

そこで、裁判所の許可を要件として、少額債権について再生計画認可決定確定前に弁済することが認められています。

当該再生債権が「少額」かどうかは、再生債務者の業務の規模、資金繰り、弁済能力などを総合的に考慮して決定されます。再生手続を利用するのが主に中小企業ということから、10万円というのが一つの目安となっているようです。

なお、仮に少額債権の基準が10万円とされた場合、50万円の債権を有している再生債権者でも、40万円を放棄するならば、10万円を弁済してもらうことができます。但し、少額債権の弁済というのは再生債務者の義務ではなく、資金繰りに応じて実施されることになります。 

2 事業の継続に著しい支障を来す場合の少額債権の弁済

この弁済は、上記1の弁済とは異なる観点から判断されます。その判断要素としては、弁済の対象となる債権の額、再生債務者の資産、弁済の必要性などが挙げられます。ただ、この要件は、制度が濫用されないよう厳格に解釈されているようです。

過去には、下記のようなケースで弁済が許可されています。

・  原材料の供給業者が限られている場合に、取引先である供給業者から当該原材料の供給が停止されてしまうとき

・  一定の地域内に運送できる運送業者が限られている場合に、取引先である運送業者を通じての主要商品の配送が出来なくなるとき

・  病院の廃棄物を処理する業者が限られている場合で、当該取引先の処理業者との取引が止まってしまい、代替措置を取ることもできないとき

Category:弁済 , 民事再生

企業向け顧問弁護士サービス
企業を対象とした安心の月額固定費用のサービスを行っています。法務担当を雇うより顧問弁護士に依頼した方がリーズナブルになります。