当社で使用するためのソフトウェアの開発を,外部のソフトウェア会社に委託しました。完成したソフトウェアの著作権は,だれにあるのでしょうか。また著作権が開発会社にあるならば,それを譲り受けることはできるのでしょうか。

完成したソフトウェアの著作権は,開発会社にあります。その著作権を譲り受けることは可能ですが,いくつか注意が必要です。

解説

ソフトウェアの著作権は譲渡することができますが、以下の3点に注意が必要です。

  1. 著作権譲渡契約条項

    ソフトウェアの著作権譲渡契約書にて「本ソフトウェアに関するすべての著作権を譲渡する」とだけ定めたのでは,翻案権・二次的著作物の利用に関する権利は開発者に留保され,譲渡されたとは認められない可能性があります(著作権法61条2項参照)。明確に,「著作権法27条及び28条に規定する権利を含む」という言葉を条項に盛り込む必要があります。

  2. 著作者人格権不行使特約

    著作者人格権は譲渡することができません(著作権法59条)。そのためソフトウェアの著作権譲渡契約を結んだとしても,公表権(18条),氏名表示権(19条),同一性保持権(20条)は開発者に残っています。そこで著作権譲渡契約において「譲渡人は,譲受人及び譲受人が指定する第三者に対して,本ソフトウェアに関する著作者人格権を行使しないものとする」という著作者人格権不行使特約を定めておくべきです。

  3. 第三者の著作権が含まれている場合

    完成したソフトウェアの一部につき第三者の著作権が認められている場合があります。第三者の著作権の範囲については開発者にも著作権が認められないのですから,それを譲渡することもできません。その部分については別途第三者から利用許諾を得るなどする必要があります。  委託会社は多額の費用を払って開発を委託したのだから,自社がその著作権を得たいところです。そうすることで開発会社がライバル会社にも同じソフトウェアを提供することも防げます。一方開発会社は著作権を全部譲渡してしまうと,開発したプログラムを以後利用できないことになってしまいます。 具体的な場面では,汎用性のあるモジュール等は開発会社に一部留保しつつ無制限の利用許諾を得ることや,著作権を共有することなども選肢択に入れて契約交渉を進めることになります。

参考

東京地裁平成18年12月27日判決―ヤマト事件

Category:権利

企業向け顧問弁護士サービス
企業を対象とした安心の月額固定費用のサービスを行っています。法務担当を雇うより顧問弁護士に依頼した方がリーズナブルになります。