商品・サービスの購入時にポイントや、おまけ等を付したいと考えています。法的にはどのような問題があるでしょうか。

1 はじめに

商品を購入したり、サービスを利用したりした場合に、ポイントを付与する、別の品物を付与するなどをすることがあります。
このようなポイントや品物の付与は、商品やサービスの購買意欲を高めるために有効な方法として、広く行われています。しかし、過大な景品類を付与すると、一般消費者の合理的な選択を阻害するため、これを防止する必要があります。

このためポイントや品物の付与は、法律上は「景品類」に該当するものとして、景品表示法の規制を受けます。

景品類を付与には様々なタイプがあるため、具体的な事例の適法性は個々のケース毎に検討されるべきですが、以下において、一般的な制限の概要をお示しします。

消費者庁Q&A
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/representation/

2 景品表示法の考え方

景品表示法では、おまけやポイントが「景品類」に該当する場合には、景品類の価額、総額等に制限が加えられれています。
おまけやポイントを付す場合には、以下を検討する必要があります。

①おまけやポイントが「景品類」に該当するのか
②該当する場合には、「景品類」の提供の方法はどのような方法か
③価額、総額等が法令の制限を超えていないか

3 「景品類」とは

景品類は、以下のいずれかに該当するものとされています(景表法23項)。

①顧客を誘引するための手段である
②取引に付随する
③経済上の利益

例えば、「1000円分以上のA商品を購入した場合には、B商品を特別に付与します」という運用がある場合は、特別付与されるB商品は、「景品類」に該当します。

①B商品が特別に付与されることでA商品の購入を促し、顧客を誘引する手段であり、
1000円分以上を購入するという取引によって特別付与が受けられるので、取引に付随し、
③B商品は経済的価値のある商品であり、経済上の利益であるからです。

上記のように①から③を満たす場合には景品類となります。
ただし,これには例外があります。

「正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益は、含まない。」とされます(景品類等の指定の告示の運用基準6(4))。

例えば、「10回のご利用で〇円値引き」「A商品を5個買った場合には、A商品をもう1個進呈」などは、正常な商慣習に照らして値引きと評価できることがあります。
また、「A商品を購入した場合には、無料で取扱いサポートサービスが付きます」などは正常な商慣習に照らしてアフターサービスと評価できることがあります。
値引きやアフターサービスと評価できる場合には、「景品類」に該当しません。

4 景品の提供の方法

景品表示法では、景品類の提供の方法により、「景品類」の提供の制限が変わります。
景品類の提供の方法としては、大別して、①懸賞、②総付けがあります。

懸賞又は総付けのいずれに該当するかを検討して、どのような制限が課されているかを判断する必要があります。

以下では、それぞれについて説明します。

5 懸賞

「懸賞」とは、以下の方法で景品類を提供する相手方又は景品類の価額を定めるものをいいます。

①くじその他の偶然性を利用して定める方法
②特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法

例えば、抽選をする方法や、コンテストの結果で判断する方法などが該当します。
「景品類」に該当するものを、このような方法で提供する場合には、以下の最高額と総額の制限に従う必要があります。

取引価額

景品類の最高額

景品類の総額

5000円未満

取引価額の20

取引予定総額の2

5000円以上

10万円

取引予定総額の2%

この表のうち、「取引価額」は、以下のように算定します。

購入額が一定額に達した場合に「景品類」を提供する場合には、その金額が取引価額になります。
例えば、1000円分購入した者を対象に「景品類」を提供する場合には、取引価額は1000円です。
購入額にかかわらずに「景品類」を提供する場合や、購入するのかどうかを条件とせず「景品類」を提供する場合には、原則として、「取引価額」を100円と算定します。

ただし、最低価格のものが明らかに100円を下回っている場合や、最低価格のものの販売される頻度が著しく少ない場合には、通常販売されるもののうち最低の価格のものが100円を超えると認められるときは、その最低のものを取引価額とすることができます。

また、この表のうち「景品類の最高額」は、通常、その景品類を購入する場合の価額です。

加えて、この表のうち「景品類の総額」は、当該懸賞による景品付販売で達成しようとする商品・役務の売上予定総額です。
懸賞を行って景品類を提供する場合には、この金額を事前に算定しなければなりません(算定は、客観的・合理的に行うこととされています)。
もちろん、予定総額に過ぎないので実際の売上金額が予定総額を超えたり、満たなかったりすることがあります。
この場合、根拠がある客観的・合理的な予定総額を算定していれば、問題視されることはありません。

なお、上記の懸賞を、複数の事業者で行い、以下のいずれかの類型に該当する場合には、例外的に、以下のように最高額と総額の制限が緩和されます。

①一定の地域における小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場合
②1つの商店街に属する小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場合
③一定の地域において、一定の種類の事業を行う事業者の相当多数が共同して行う場合

取引価額

景品類の最高額

景品類の総額

取引価額にかかわらず、右の最高額が上限である。

30万円

取引予定総額の3

6 総付け

総付けとは、「懸賞」によらずに購入した者全員に景品類を提供するような場合です。

このような総付けによる景品類の提供については、以下の制限に従う必要があります。

取引価額

景品類の最高額

1000円未満

200

1000円以上

取引の価額の10分の2

この表のうち、「取引価額」は、以下のように算定します。
購入額に応じて「景品類」を提供する場合には、その金額が取引価額になります。
例えば、1000円分購入した者を対象に「景品類」を提供する場合には、取引価額は1000円です。
購入額にかかわらずに「景品類」を提供する場合や、購入するのかどうかを条件とせず「景品類」を提供する場合には、原則として、「取引価額」を100円と算定します。

ただし、最低価格のものが明らかに100円を下回っている場合や、最低価格のものの販売される頻度が著しく少ない場合には、通常販売されるもののうち最低の価格のものが100円を超えると認められるときは、その最低のものを取引価額とすることができます。

この表のうち、「景品類の最高額」は、通常、その景品類を購入する場合の価額です。

7 最後に

景品類の規制は、細かい条件が多く、やや分かりづらいと思いますが、本記事が理解の一助になれば幸いです。

Category:IT

TAGS:ポイント制度 , 景品表示法 , 景品類 , 景表法

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