契約書の条項削除を求められました、どのように回答すればよいでしょうか?

背景

X社は,プログラム開発業務業務を行うにあたり,部分的な開発業務をA社に外注する予定です。



X社とA社の外注契約について,A社から,万が一,A社の納品した成果物に起因してX社に損害が生じた場合,A社の賠償責任の範囲の上限を,X社とA社との契約金額とする条項を入れてほしいと提案されました。



X社は,この条項の削除を求めたいと考えています。どのように回答すればよいでしょうか?

解説

契約条項についての交渉は「何が公平か?」という観点から説得することがポイントです。

X社に対する発注者(Y社)とX社との関係では,外注先であるA社の故意・過失は,「履行補助者」の故意・過失という理論により,法律的には,X社の故意・過失と同視されます。このため,A社の納品した成果物に起因して損害が生じた場合でも,X社は,Y社に対しては,通常生じる損害の賠償責任を負担しなくてはなりません。

にもかかわらず,X社が,A社から契約金額の返却または契約金額の弁済義務の免除という損害賠償しか受けられないとすれば,X社は,通常生じる損害の賠償額からA社との契約金額を差し引いた額の金銭的負担を負うことになります。

一方,A社が責任を負うのは,A社が他社の権利を侵害していないと保証していたにも拘わらず他社の権利侵害があった場合のような保証義務違反等の事実およびX社の損害が立証された場合です。そして,その賠償義務は,民法416条によって基本的にはA社の債務不履行から通常生ずる損害に限られます。このため,もともとA社が不当に重い責任を負う恐れはないのです。

以上のような法律関係を前提とすれば,A社のX社に対する責任を契約金額に限定するという条項は,A社に一方的に有利なもので,公平な条項とはいえないでしょう。

特に継続的な契約関係の場合,X社とA社の間で,WIN・WINな関係を保つことが大切であることを強調することも重要でしょう。

X社のこのような説得にも拘わらず,A社がどうしても条項の追加を主張する場合,X社は,上記のリスクを冒してでもA社に外注するだけのメリットがあるかを判断して意思決定することになります。

Category:契約 , 契約書

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