ビットコインと法律関係

ビットコイン

最近、ビットコインに関する記事を目にしない日はありません(論調は色々ですが。)。私のところにも、ビットコイン関連のビジネスをやりたいという相談が舞い込んできます。しかしながら、「法律関係については、正直よくわからん!」という方が多いようです。ここのところ、ビットコインの取引所に関して良くないニュースが続いており、ビットコイン自体が素晴らしいものであったとしても、その周辺プレイヤーのためにビットコインそのものの信頼も揺らぎかねない状況です。一方で真面目にビジネスを志す方がいらっしゃるのに、とても残念なことだと思います。そのような時こそ、プレイヤーは市場で信頼を得るための方法を良く考えるべきだと思います。
そこで、ここでは、ビットコインについて法律的にはどのようなことが問題になるのか、事業を始めるにあたっての注意点などを少し書いてみたいと思います。

まず、そもそもビットコインとは何か?というところですが、私も技術的なところは良くわかりませんし、色々なところで書かれているので詳細は触れません。発行者のいない国際通貨のようなものだということのようです。私は、鉱物の「金(きん)」みたいなものだというイメージを持っています。発行者がいない、採掘される、採掘される量には上限があり希少性がある、そのコイン自体の価値は認められている(ことをここでは前提とします)、日々需給によって値段が変わる、などなどからです。そして、世界各国のビットコインを売りたいという人と買いたい人のニーズがマッチすれば売買が成立するのですが、なかなか個人間ではその需給を繋げる手段がありません。そこで、その売買の場として各地に取引所が設置されています(金でいえば商品取引所でしょうか)。残念ながら、現在はその取引所自体に問題があることから強奪事件が発生したり、サイバー攻撃を受けたり、取引停止が生じたりしているようです。ビットコイン自体に価値があったとしても、その周辺プレイヤーに信用性がないので、日本ではまだ眉唾ものとして見られているというのが現在の状況ではないでしょうか(他にもたくさん理由はあると思いますが。)。

さて、ビットコイン関連ビジネスをされる方が一番知りたいのは、結局、ビットコインは法令によって規制され(てい)るのか否か、また、され(てい)るとしてどの法令が問題なのか、というところのようです。
そもそも法律というのは、何かを保護する目的があって作られます。ビットコインに関連して保護されるべきなのは、ビットコインの円滑な流通や利用者の保護といったところになると思います。そのような視点から問題になりそうな法律を考えてみると、①金融商品取引法、②商品先物取引法、③出資法、④資金決済法、⑤犯罪収益移転防止法あたりがメインでしょうか(他にもいくつかありますが)。これらをそれぞれ見てみます。 

まず、①金融商品取引法、②商品先物取引法は、金融商品などに関しその流通を保護したり、投資家を保護する法律ですが、その規制対象とする「有価証券」とか「商品」という定義が結構きちんと決まっているので、現在の時点でビットコインがその規制の対象となると考えるのは難しそうです。
次に、③出資法の預り金禁止規定に引っかかるのではないか、という点ですが、そもそも「預り金」とは、元本保証をして金銭を預かることです。ビットコイン購入について元本保証がなされているかというと、どうも違うような気がします(ここは考え方にもよります。)。
④資金決済法(及び銀行法の一部)は、金銭の送金業務や電子マネーの発行業務などを規制しており、金銭を出した顧客の保護を目的にしています。これに当てはまるかは一考を要しますが、そもそも発行者がいないということからすると、どうも法律としては当てはめにくいところです。
⑤犯罪収益移転防止法は、マネーロンダリング防止対策のために一定の事業者に取引時の本人確認などを求めるものですが、対象の事業者でなければそのような本人確認等の義務はありません。上記したいくつかの法律に当てはまらないとなると、犯罪収益移転防止法による義務もないということになってしまいます。
なお、ビットコインの売買は両替業務のような位置づけもあると思うのですが、現在両替業務は誰でも行うことができます(外為法上一定の事後報告は必要です。)し、そもそも、両替にあたるのかが不明です。

以上のように色々と検討していると、どの法律にもヒットしそうだけど、どうも違う、ということになってしまいます。だからこそ、皆さんが困っているというのが現状でしょう。
私の個人的な意見をいえば、①金融商品取引法や②商品先物取引法(に類似する法律)の中で、ビットコインを「有価証券」とか「商品」のような一定の定義に位置づけて、取引所や仲介業者等の周辺のプレイヤーに対して適正な業務実施を促し、ビットコイン自体の流通はきちんと保護するという建付けが一番しっくりくるような気がします。
これから消費者の被害が増えてくれば、もしかすると行政側は何かの法律を拡大解釈して規制を当てはめようとしてくるかもしれませんが、本来は立法によって解決されるべき問題なのだと思います。

では、結局ビットコイン関連でビジネスをやりたいという人はどうすれば良いのかということです。規制する法律がない(はっきりしない)、ということであれば、一般法(民法・刑法など)に違反しない限り自由にやってよいというのが原則です。しかしながら、多くの起業者の方は、継続的にビジネスを営んで、市場から信頼されるプレイヤーになりたいと思うのが通常でしょう。そうすると、コンプライアンス対応は避けて通れません。
まずは、自分がビットコイン関連業務の中で、どのようなビジネスをやりたいのかをしっかり確定させることです。取引所を開設したいのか、その下流の証券会社のような位置づけのビジネスをやりたいのか、それとも個人が多くの店舗で便利にビットコインを利用できるようなプラットフォームを整備したいのか、などによって、やるべきことは変わってきます。そして、ビジネスの内容が固まったら、現行の法律の中で、自分の業態に一番ぴったりとくる規制を選択して、その法律の規制をできるだけ取り入れて、自助努力で顧客の信頼確保に努めるべきでしょう。

例えば、取引所を営みたいのであれば、①金融商品取引法や②商品先物取引法で取引所に課されている規制を確認するとともに、市場の取引所(東証など)がどのような自主規制を整備しているのかを参考にするべきでしょう。証券会社のようなことをやりたいのであれば、①金融商品取引法で、金融商品取引業者にどのような規制が課されているかを参考にすべきです。決済のプラットフォームを作成したいと考え、それが、④資金決済法上の「資金移動業」に似ているというのであれば、その規制を参考にして、事業資金とは分離された口座に顧客から預かった資金を全額デポジットすることも考えなければならないかもしれません。いずれの場合にも、現在のところ最も気を付けるべきなのは、マネーロンダリングに関わらないことでしょう。この点については、犯罪収益移転防止法を参考として、本人確認や疑わしい取引の届出をする(受け取ってもらえるかわかりませんが)などの自助努力ができます。アメリカで一部マネーロンダリング共謀容疑での逮捕者が出るなど、非常に気になるところですが、日本でも麻薬特例法等の法律に違反してはならないことは言うまでもありません。

以上のような対応をしておけば、いざ立法がなされた際には、その規制にスムーズに対応できるでしょうし、万が一行政から何らかの指導を受けることがあっても、胸を張って利用者保護を図っていると説明できるはずです。現行の法律の規制を受けるかどうかについて疑義がある場合には、事前にノーアクションレター制度を利用して省庁へ事前確認することも可能です。

これからビットコインがどのようになっていくのかはわかりませんが、事業を始められる方は、できうる限りの備えをしてから事業活動をスタートさせるべきではないかと思います。

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