投資信託・投資法人法制の見直しについて

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平成24年7月3日に,金融審議会の「投信信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」の「中間論点整理http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/toushi/siryou/20120703/03.pdf 」が発表されました。

このワーキング・グループは,平成24年1月に金融担当大臣が「国民が資産を安心して有効に活用できる環境整備を図るため」に行った諮問を受け,金融審議会が設置したもので,今まで8回にわたって行われてきました。今回発表されたのは,その議論を整理する観点から作成されたものです。なお,最終報告は年末に取りまとめがなされる予定です。

 

<「中間論点整理」の内容についての私見>

この審議は,「投資信託及び投資法人に関する法律」(通称:投信法)の改正に向けて行われているものです。やや地味なテーマとも言えますが,改正内容によっては実務に大きな影響があります。例えば,平成12年の旧投信法改正では,「J-REIT」(不動産投資法人)が解禁となったりしています。

 

今回の中間論点整理の内容は多岐にわたりますので,いくつか気になった点をピックアップしたいと思います。

 

トータルリターン把握のための定期的通知制度の導入

これはどちらかというと販売会社の負担面からして,実務的に影響があるのかなと感じます。

このトータルリターン通知制度というのは,投資信託購入時から現在までの投資期間全体における累積損益(トータルリターン)を顧客に通知するという制度です。内容的には非常にいい制度だと感じますが,負担増になるであろう金融機関は抵抗しそうな気がします。

 

販売・勧誘時等におけるリスク等についての情報提供の充実

「投資信託」は耳慣れた言葉であるがゆえに,実際には仕組みを理解しないで購入している人が多いように感じます。投資信託の販売会社である金融機関が運用していると誤解したり,銀行からの勧誘だったりすると元本保証と誤解したりする例が後を絶ちません。

もちろん,顧客に渡す資料には,「元本保証ではない」とかリスクに関する記載がありますので,書類上は,顧客はリスクを理解して投資信託を購入したという建前になっていますが,実際にはかなり形式的なもので,渡された書類に細かく目を通す顧客は少ないのが現実です。

投資信託は商品によっては複合的なリスクを抱えているケースも多く,分かりにくいものです。

そこで,今回は,各商品のリスクの度合いをわかりやすく説明できるような仕組み作りを検討しているとのことです。

考え方自体には賛成ですが,わかりやすさを追求した場合,かえって顧客に「安全な商品」だという誤解を与えかねないかというのが心配でもあります。例えば,この投資信託は格付けが「A」だから安全ですなどという説明を鵜呑みにしてしまいかねないのではないかという心配です。最近,仕組債のような複雑な金融商品でさえ,発行体については格付けさえ説明しておけば足りるかのような悪しき風潮があるようですので。

 

J-REITの方向性について

J-REITは安定的にキャッシュフローを生み出す不動産という原資に裏付けられた商品であり,ミドルリスク・ミドルリターンを期待されているにもかかわらず,市場の影響を受け,価格のボラティリティ(変動)が大きいという問題があるので,その点について検討するとのことでした。

また,J-REITのスポンサー企業(資産運用会社の親会社等)への依存がみられ,スポンサー企業の利益と投資主との利益が相反するようなケースへの懸念も示されました。

スポンサー企業が保有する明らかに不良な不動産を投資法人が買わされてしまうようなことがあってはよくないと思いますので,この懸念はもっともだと思います。

 

投信法人に関するインサイダー取引規制の導入

現在,上場投資法人に係る投資証券の取引については原則としてインサイダー取引規制の対象外となっていますが,実際にはスポンサー企業に関する情報によって価格が相当程度変動することから,そういった情報を事前に知りうる者による不公正な取引も想定できることになります。

そこで,上場投資法人に係る投資証券の取引についてもインサイダー取引規制の対象とすることで検討しているとのことです。

何かとインサイダー取引規制が話題になっていますから,これも今回の改正では目玉になるかもしれませんね。

 

 

ここでご紹介したのはかなり限定的ですが,今回の審議内容は,地味ながらも,実務的には影響のあるものになりそうなので,これからも注視していきたいと思います。

 

平成24年7月24日

 

 

 

 

 

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