AIJ投資顧問株式会社の問題と金融商品取引法について

金融商品取引法

平成24年2月24日付けで金融庁よりAIJ投資顧問株式会社に対して,業務停止命令や業務改善命令の行政処分がなされました。事件の全貌は調査中ということですが,当該行政処分の根拠となった金融商品取引法52条について少し述べてみたいと思います。

金融商品取引法52条1項8号は,「投資助言・代理業又は投資運用業の運営に関し,投資者の利益を害する事実があるとき。」と定めています。今回はこれに該当するとされています。

ただ,AIJ投資顧問に関する報道をみていますと,「法令違反の場合」(金融商品取引法52条1項6号)や「不正又は著しく不当な行為をした場合において,その情状が特に重いとき」(同9号)にも該当しそうな感じがします。この状況下ですと,AIJ投資顧問は登録取消しになる可能性が高そうですし,場合によっては役員に対して解任命令が出されるかもしれません(役員解任命令は滅多に出されないものですが。)。

役員の解任命令という制度ですが,金融商品取引法52条2項が,金融商品取引法52条1項6号・8号・9号などに該当する場合には内閣総理大臣が当該金融商品取引業者に対して当該役員の解任を命ずることができると規定しており,この規定に基づくものです。

なお,役員解任命令が出された場合に,その業者に役員を解任する権限が発生するのかという問題(本来,株式会社の役員の解任は株主総会で決すべき事項ですが,解任命令が出た場合に,株主総会決議がなくても解任できてしまうのかという問題です。)もありますが,会社法の規定を排除する内容の明文がない以上は,会社法の規定に従って,役員を解任することになるだろうと私は考えます。ただし,解任命令が出された場合には,金融商品取引業者としては,速やかに当該役員解任に必要な手続きを進める義務があるとも思います。

今後は,AIJ投資顧問自体に対する損害賠償問題もさることながら,その役員(取締役,監査役)に対する損害賠償請求なども検討することになるのではないかと思います。

 

2012年3月1日

Category:金融商品取引法

著者
クレア法律事務所>
クレア法律事務所

クレア法律事務所のスタッフブログです。

その他のブログ記事

最新ブログ記事