デリバティブ取引による損害

オプション取引スワップ取引デリバティブ取引説明義務適合性原則金融商品取引法

前回はEB債についてブログを書きましたが、今回はEB債のような仕組債を含めてデリバティブ(金融派生商品)取引について少し書いてみます(というのも、「為替デリバティブ訴訟」に関する講演依頼があったため。)。

デリバティブ取引の中でも、為替デリバティブ取引はそれなりに有名になってきていると思います。もっとも、為替デリバティブと言っても、オプション取引と言われるものもあればスワップ取引と言われるものもあり、設定する諸条件によってその特性やリスクも変わってきますから、購入する際には、その商品の特性やリスクを具体的に把握することが不可欠です。

デリバティブ取引とは、金融派生商品取引とも訳され、金融商品・金融指標の先物取引、先渡取引、オプション取引、スワップ取引およびクレジットデリバティブなどのことを言うとされています(取引の場所によって、「市場」・「店頭」・「外国市場」デリバティブ取引などに分けられます。)。

 

デリバティブ取引の使われ方として,もっとも有効なケースとしては,ある原資産(例えば,原油や米ドル)の将来の価格変動によるリスクをヘッジする(避ける)ようなケースです。

 

その「リスクヘッジ」を売り文句にして,一時期,多くの金融機関が為替デリバティブ商品を売りまくったとも言われています。

実際に,私の経験でも,為替デリバティブの事案はかなりあります。為替デリバティブ取引の問題が露呈し始めたのは円高が始まったころですが,当該金融機関から融資を受けているケースもかなりありました。そして,毎月毎月垂れ流しに近い形で損失が発生していくという状況で,ご相談に来られるという形です。

そういったケースで共通するのは,最初は取引銀行からの案内だったりして,話を聞いていき,何となくリスクヘッジになるような説明を受けて,よく理解をせずに取引を開始してしまっている点です。取引銀行からの説明なので,信用しやすい状況にあるため,リスクが少ないと言われれば,そう信じてしまうのです。また,実際にはリスクヘッジになっていないケースも多いです。

そして,この手の商品は原則として中途解約が禁止です(販売会社がOKすれば中途解約できますが,その際には中途解約精算金が発生する旨の約定があるものです。この中途解約精算金については後日ブログを書く予定です。)。ですから,取引開始後,本当のリスクに気付いたときには取り返しがつかないことになってしまっていることが多いのです。

取引終了まで持ちこたえられるような損失ならまだいい方なのですが,デリバティブ取引の多くは,悪い方に指標が動いたときには,損失も増幅するもので,それが毎月発生するとなると,本業がどれだけ好成績でも会社を持ちこたえられず,その結果,破産や民事再生という道を検討せざるを得なくなることもあります。

 

本業は順調なのに,デリバティブのせいで破産等に追い込まれるという事態が,その商品のリスクをよく分かっていなかった証とも言えますが,まさに本末転倒であり,破産等以外の方法で解決すべき問題と言えます。投資知識も乏しく,十分とは言えないような説明でデリバティブ取引を開始してしまった方(法人・個人を問いません)はなるべく早い段階で弁護士等にご相談されることをお勧めいたします(融資先との関係悪化を恐れて相談が遅くなる方もいらっしゃるのですが,融資先との関係は気にせずに,まずは早期に相談されることをお勧めいたします。)。

なお,平成24年1月27日付け日経新聞によれば,金融庁が個人投資家の保護策を検討する方針を表明するとのことです。今後は,理解の難しい高リスク商品の販売にも歯止めがかかると思いますが,既に購入された方々の救済も必要と言えます。

2012年1月29日

Category:オプション取引 , スワップ取引 , デリバティブ取引 , 説明義務 , 適合性原則 , 金融商品取引法

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