先物取引被害と消費者契約法①

先物取引消費者契約法

「必ず儲かります」「絶対に値上がりします」「絶対損はさせません」「元本保証です」などいう言葉を担当者から聞いて先物取引に勧誘された方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし,このような言葉を用いることが自体が違法といえます。今回はそういう行為を規制する法律のうち消費者契約法についてお話をします。

 

<消費者契約法>

消費者(個人)と事業者(法人等)との間の情報・交渉力の格差に鑑み,消費者が不当に損害に遭ったり,損害を拡大させないことを目的として,消費者契約法という法律が存在します。

先物取引というのも,勧誘してくるのは事業者であり,顧客が個人であれば,この消費者契約法が問題となってくる場合があります。

なお,会社経営者のように個人でもある一方で,法人の代表者でもある方の場合,業者が,「会社名義での取引にしましょうよ」と言ってくる場合もあります。この際に,業者の勧めに応じて会社名義での取引とした場合,消費者契約法は適用されませんので,ご注意ください(と言っても,商品先物取引法等が適用されますので,消費者契約法の適用がないことを過剰に気にする必要はないです。)。

また,会社名義での取引としながら,代表者がその取引に関する債務も負担する内容の書面を求められる場合もありますが,署名捺印 する場合にはよく書面の内容を確認するようご注意ください。

 

さて,消費者契約法と先物取引被害において,まず問題となってくるのが,消費者契約法4条です。条文内容は以下のとおりです(条文自体は読み飛ばしていただいて結構です。)。

 

消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し
第4条  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
   重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
   物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け 取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
   当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
 ② 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。
 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。
   物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容
   物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件
 第一項から第三項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
       
         
非常に長い条文なのですが,特に重要となってくるのが「断定的判断の提供」と「不実告知不利益事実の不告知」です。
  
  
  
<断定的判断の提供>
 
 
先物取引被害訴訟では「断定的判断の提供」という言葉がよく出てきます。
 
 
聞き慣れない言葉ですが,要するに,「必ず儲かります」とか「絶対に値上がりします」とか「今が底値だから今買わないと一生後悔をしますよ」などという断定した言葉を用いることです。
 
 
先物取引というのは複雑なものですから,たとえ専門家であっても,将来のことを断言できるはずがないのです。それにもかかわらず,上記のような断定的な言葉を使って勧誘すること自体が問題というわけで,このような言葉を信じて先物取引に入った消費者はこの先物取引を取り消せると定めたのが消費者契約法4条です
 
 
ただ,何でもかんでも断定的判断の提供を使ったらいけないというわけではなく,消費者契約法は,「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項」についてと限定しています。ただ,先物取引のような儲け話ですので,おおむねこれに該当することが多いだろうと思います。
 
 
裁判で問題となるのが,上記のような言葉を担当者が使ったかどうかです。これは立証の問題であり,弁護士とよく相談して,立証方法を考えることが不可欠です。
 
2011年10月19日

Category:先物取引 , 消費者契約法

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