先物取引等において金融商品取引業者が説明義務を負う理由

先物取引説明義務金融商品取引法

<説明義務について>

証券取引や先物取引などにおいて金融の素人である顧客と金融業者との間で紛争が生じた場合,一番問題となってくると言って過言でないのが,説明義務違反の有無です。良心ある顧客であれば,当初受けた説明の範囲内の損失については甘受しようと考えるのですが,当初受けた説明と違う結果が生じた場合には不満が出てくるのは当然のところです(とは言え,自己責任だと諦めて,泣き寝入りする方も多いのが実情でしょう。)。場合によっては「だまされた!」と考えることもあると思います。

これは金融商品の販売に限らない事象だと思いますが(例えば,電化製品を買ったときに,その機能が当初受けた説明と違っていれば憤慨するのは当然とも言えます。),金融商品の場合には一般的に金額が大きいことや場合によっては支払った金額以上の損害(元本毀損のリスク)が発生することがありますので,説明義務違反による損害は深刻なものといえます。

金融商品取引業者の説明義務については,法律上の根拠があります。金融商品の販売等に関する法律3条商品先物取引法218条などはそのことを明記していますし,金融商品取引法36条(顧客に対する誠実義務)からも金融商品取引業者の説明義務は導かれます。

<説明義務を負う理由>

それでは,このように一般投資家に対する金融商品取引業者の説明義務が重視される理由はどこにあるのでしょうか。

この点については,色々な説明がなされているところですが,金融業者と一般投資家との間には情報力の格差があるので,一般投資家に自由な意思決定をさせるために情報を提供する義務があるということ,自己責任を正当化するためにはその自己決定がきちんとなされるような情報環境が必要であるということ,非専門家は専門家の専門的知見に依存するという構造にあるので,その専門家としての地位に基づき説明義務を負うことといったあたりにあると言われています。

実際に数々の事件に当たってみての感想ですが,専門的知識のある金融業者の言うことを一般投資家は信じやすいという状況下において,自己責任を追及するためにはその意思決定の前提となる必要か十分な情報をプロが一般投資家に提供することが不可欠なんだろうという感じです。

営業ノルマばかりを追い求める金融営業マンは,顧客にとっておいしい話ばかりを強調するので,挙句の果てに説明義務違反を犯しがちなのです。説明する方にも金融のプロであるという自覚と良心を持って欲しいものです。

2011年10月4日

Category:先物取引 , 説明義務 , 金融商品取引法

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