セキュリティクリアランス制度 衆議院で可決(2024年4月9日)

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重要経済安保情報の取扱い業務は、適性評価において情報を漏えいするおそれがないと認められた者に制限するセキュリティクリアランス制度が4月9日に衆議院で可決された。法案は参議院に送られて今国会で成立する模様。

以前から国防関係情報に関しては調査制度があったが、それが重要インフラなどの情報にも広げられた。
評価手続に入るには、本人の同意が必要だが、調査の内容は、親族の国籍、本人の犯罪歴、酒癖、借金などに及ぶ。

制度の必要性は理解できる。だが、この制度は、評価結果が不適格の場合、国が「この人は大事な情報を取り扱わせること能わざる人」と認める制度である。
不適格な人は当然その種の情報を取り扱う業務からは外されることになる。
飲み会に出て携帯忘れたことがある、馬券買い過ぎて月末苦しくなってキャッシングしたことがある、義理の兄弟の奥さんは〇〇国の人といったことで「不適格」となるかもしれない。
評価項目の「⑥飲酒についての節度に関する事項」(後掲)とは、生中(ビール)1杯と、お酒2合までなのか、ハイボール4杯飲んだらダメなのか (?_?)
また、今後、情報漏洩事件が起きた場合には、その人の属性をプロファイリングして事故発生の因子になった事由を付け足していくことにならないか。
人権派弁護士でなくてもかなり抵抗感のあるものではないか。

2013年にも同趣旨のルールを導入する動きがあったが野党の反対で廃案となった。しかし、今回は共産、れいわが反対しただけで、立憲は反対せず、いわば事務的に可決された。

もちろん、ウクライナ、イスラエルでの紛争、東シナ海の不安定化、情報のデジタル化とテクノロジーの進化による情報の不正利用の脅威の増大など2013年と現在では環境はかなり違う。
法律は、法律の合理性を支える社会的な事実(立法事実)に基づいて制定される。社会的な事実が変わっていけば、法律も変わっていく。
そこが問題であり、環境が変わることによって国家と個人との関係は簡単に変わってしまうということに緊張感は持っておくべきだと思う。
近隣諸国で紛争が起き、日本がそれに巻き込まれていけば、再び挙国一致という雰囲気になり、憲法を改正し、与野党一致して徴兵制の導入に踏み出すかもしれない。
日本への侵略を放っておくことはできないからある程度の犠牲は已むをえない、となってしまう。
日本は、日本ファーストなどと言ってられる国ではない。国防のために人々の権利が制限されるような状況に陥らないために、国際情勢の安定化のために常に全力を尽くしていくしかない。

セキュリティクリアランス制度:
法令名「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」

重要経済安保情報とは、重要なインフラや物資のサプライチェーンに関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿する必要があるもの(具体例:サイバー脅威・対策等に関する情報、サプライチェーン上の脆弱性関連情報)。
適正評価の調査内容は、①重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項 ②犯罪及び懲戒の経歴に関する事項 ③情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項 ④薬物の濫用及び影響に関する事項 ⑤精神疾患に関する事項 ⑥飲酒についての節度に関する事項 ⑦信用状態その他の経済的な状況に関する事項

概要:
https://www.cas.go.jp/jp/houan/240227/siryou1.pdf
条文:
https://www.cas.go.jp/jp/houan/240227/siryou3.pdf

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TAGS:セキュリティクリアランス制度 , 重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律

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古田利雄>
古田利雄

主にベンチャー企業支援を中心に活動しています。上場ベンチャー企業、トランザクション、NGC、Canbas等の役員もしています。

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