厚労省 事業譲渡指針(Aug.2016.)の紹介

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事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針(平成28年8月17日・厚生労働省告示第318号)

厚生労働省から、事業譲渡等に際して労働者保護の観点から会社が留意すべき事項についての指針が告示されました。M&Aをする際にはこれらに留意すべき必要がありますので、その要領をご紹介します。

この指針は、会社等が、事業譲渡や合併を行うに当たり、労働契約の承継に必要な労働者の承諾の実質性を担保し、労働者及び使用者との間での納得性を高めること等により、事業譲渡及び合併の円滑な実施及び労働者の保護に資するよう、会社等が留意すべき事項について定めたものです。

留意すべき事項のポイントは以下のとおりで、このような配慮をするのが適切であるとされています。なお、特定承継とは売買契約のように個別の権利義務の移転で、包括承継とは相続のように権利義務全部の承継のことです。

(1)事業譲渡における権利義務の承継の性質は、個別の債権者の同意を必要とするいわゆる特定承継であるため、承継予定労働者から、個別の承諾を得る必要があること。
(2)承継予定労働者の真意による承諾を得られるよう、承継予定労働者に対し、事業譲渡に関する全体の状況、承継予定労働者が勤務することとなる譲受会社等の概要及び労働条件等について十分に説明し、承諾に向けた協議を行うこと。
(3)譲渡会社等は、承継予定労働者から真意による承諾を得るまでに十分な協議ができるよう、時間的余裕をみて協議を行うこと。
(4)承継予定労働者が譲受会社等に当該承継予定労働者の労働契約を承継させることについて承諾をしなかったことのみを理由とする解雇等客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に該当する解雇は、労働契約法第16条の規定に基づき、その権利を濫用したものとして認められないものであること。事業譲渡を理由とする解雇についても、整理解雇に関する判例法理の適用があり、譲渡会社等は、承継予定労働者を譲渡する事業部門以外の事業部門に配置転換を行う等、当該労働者との雇用関係を維持するための相応の措置を講ずる必要があることに留意すべきであること。
(5)譲渡会社等又は譲受会社等は、承継予定労働者の選定を行うに際し、労働組合の組合員に対する不利益な取扱い等の不当労働行為その他の法律に違反する取扱いを行ってはならないこと。
(6)譲渡会社等は、事業譲渡に当たり、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との協議その他これに準ずる方法によって、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めること。
(7)譲渡会社等がその雇用する労働者の理解と協力を得るよう努める事項としては、事業譲渡を行う背景及び理由、譲渡会社等及び譲受会社等の債務の履行の見込みに関する事項、承継予定労働者の範囲及び労働協約の承継に関する事項等が考えられる。
(8合併における権利義務の承継の性質は、いわゆる包括承継であるため、合併により消滅する会社等との間で締結している労働者の労働契約は、合併後存続する会社等又は合併により設立される会社等に包括的に承継されるものであること。このため、労働契約の内容である労働条件についても、そのまま維持されるものであること。

詳細は原文をご確認ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000136056.html


   

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TAGS:事業譲渡指針 , 労働者保護 , 厚労省

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古田利雄>
古田利雄

主にベンチャー企業支援を中心に活動しています。上場ベンチャー企業、トランザクション、NGC、Canbas等の役員もしています。

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