株主総会報告

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11月27日、株式会社トランザクション(東証1部7818)の定時株主総会に取締役として出席しました。株主様からの質問に対して社長が答えたストーリーが興味深いので紹介します。ビジネスプランの企画、実行をされている方には参考になると思います。

今回の定時総会の議案などは 総会招集通知 のとおりです。

事業報告と議案の説明が終了し、株主様から幾つかご質問を頂きました。
その中に、『招集通知の企業集団の現況に関する事項・事業の経過及びその成果の項目に、「特別損失として製品廃棄損失等を1億3500万円計上した。」と記載されていますが、どうして製品を廃棄したのでしょうか。』というご質問がありました。
トランザクションの同期の売上は102億円、営業利益は5億3000万円ですから、この廃棄損失は小さくない金額です。

このとき、議長(代表取締役)の石川さんは、次のように話されました。

「××番の××様のご質問は、特別損失として製品廃棄損失等を1億3500万円計上した理由をお聞きになりたいということでよろしいでしょうか。それでは、私から説明させて頂きます。
この製品廃棄損失等の1億3500万円は、折角製造した当社製品を廃棄するものであり、金額も大きいので、私としても忸怩たる思いでおります。
平成23年3月に東日本大地震がございました。このとき、にわかに高まった節電意識に応えるために、当社ではいわゆるクール商材を製造・販売しました。このクール商材は市場に支持され、非常に多くの売上を上げることができました。
そこで、当社は引続きクール商材の開発・製造・販売に力をいれる方針をとりました。
しかし、過度な節電の実施によって、様々な問題が生じるようになりました。例えば、夜間エアコンの利用を停止したために、脱水症状でお亡くなりになるというケースがいくつも報じられるようになりました。政府も過度な節電による健康被害等に対する注意喚起をおこない、マスコミもこのような事例を大々的に報じました。これによって、クール商材のマーケットは小さくなりました。
他方で、それまでクール商材のマーケットの広がりを見て、競合する企業が一気に増えました。
増加した業者が製造した大量のクール商材を縮小したマーケットに投入した形になりました。
その結果、ご案内のとおりの不良在庫となってしまったものです。
今後は、このケースを教訓として、このような製品廃棄に至らないように留意して参ります。」

私は、取締役会で話を聞いていたので、この経過は承知していましたが、議場でこのストーリーを聞いて、改めて将来を読むことは難しいものだと感じました。
大地震というアクシデントによって、ある流れができる。それによってあるマーケットができると仮説して製品を開発し、一旦成功する。しかし、その流れが熱中症による人身事故というアクシデントによってガラっと変わってしまう。

20年ほど前に、タマゴッチというゲームが大流行し、子供に買ってやりたくてもおもちゃ屋さんに製品がないということがありました。しかし、しばらくして飽きられてしまって在庫の山ができました。タマゴッチの事案は、想定できる範囲のブームのサイクルだと思います。(もちろん、タマゴッチの事例でも商品の供給を途中から抑えたり、異なるラインナップを作ったりと対応方法はあったと思います、或はされていたのかもしれません。)
しかし、トランザクション社におけるクール商材の突然の爆発的な販売増の後に訪れた急ブレーキには、予測可能性を超えたものを感じました。

経営陣というものは、人並み外れた想像力を持つ変人にならなければならないのかもしれません。

Category:会社法 , 最近の話題

TAGS:トランザクション , 株主総会 , 社外取締役

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古田利雄>
古田利雄

主にベンチャー企業支援を中心に活動しています。上場ベンチャー企業、トランザクション、NGC、Canbas等の役員もしています。

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