合併や吸収分割の組織再編を進めています。簡易組織再編・略式組織再編について教えてください。

1 簡易組織再編・略式組織再編

原則として、合併や吸収分割を行う場合、株主総会において合併契約や吸収分割契約を承認する必要があります。
この場合、特別決議が必要になるので、定款で別途の定めがない限り、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

このような原則に対し、合併や吸収分割等の組織再編において、承継する財産や、対価として交付される財産の規模の観点から、株主に及ぼす影響が比較的小さいものは、簡易組織再編とされます。
この場合、株主総会決議による承認は不要です。

また、組織再編の当事会社の間で特別支配関係があるときには、株主総会を開催しなくても決議の結果が明らかです。
このような場合は略式組織再編となります。
この場合、株主総会決議による承認は不要です。

2 簡易組織再編の要件

相手方から承継を受ける側の会社の簡易組織再編

吸収合併存続会社、吸収分割承継会社など存続会社等(相手方から承継を受ける側の会社)では、相手会社に交付する対価の合計額が、存続会社等の純資産額の5分の1を超えない場合、簡易組織再編となります。
この場合、株主総会による承認が不要になります。

相手方に承継する側の会社の簡易組織再編

他方、吸収合併消滅会社、吸収分割会社、株式交換完全親会社など消滅会社等(相手方に承継する側の会社)では、これとは異なります。
合併、株式交換では、消滅会社等(相手方に承継する側の会社)では簡易組織再編の手続きがありません。
吸収分割の場合に限り、消滅会社等(相手方に承継する側の会社)において簡易組織再編になります。

吸収分割における、相手方に承継する側の会社の簡易組織再編

吸収分割においては、「吸収分割株式会社の総資産額」に対し、「承継する資産の帳簿価額の合計額」が20%を超えない場合、簡易分割が可能であるため、株主総会が不要です。

簡易組織再編の例外

なお、以上の簡易組織再編の要件を満たす場合であっても、株主総会が必要な場合があります。
実際に手続きを行う場合には専門家に相談することをお勧めします。

4 略式組織再編の要件

略式組織再編として、株主総会決議が不要となるためには、組織再編の当事会社の一方が他方の特別支配会社である必要があります。
特別支配会社とは、総株主の議決権の90%以上を保有している会社と、保有されている会社がある場合、保有している側の会社をいいます(子会社等と合わせて保有している場合などを含みます)。

特別支配会社の相手方(総株主の議決権の90%以上を保有されている会社)においては株主総会決議が不要です。
他方、特別支配会社(総株主の議決権の90%以上を保有している会社)は、原則どおり、株主総会決議が必要です。

なお、以上の要件を満たす場合であっても、特別支配会社の相手方において株主総会が必要な場合がありますので、実際に手続きを行う場合には専門家に相談することをお勧めします。

5 簡易組織再編の場合の株式買取請求

原則として、組織再編を行う場合、株主総会の反対株主は、発行会社に対し、株式買取請求をすることができます。
他方、簡易組織再編・略式組織再編に該当する場合、株主総会が不要な会社においては、株主は、株式買取請求をすることができません。

また、組織再編においては、会社の株主が株式買取請求をすることができる場合、会社は、効力発生日の20日前までに、株主に対し、株式買取請求の機会を与えるため、組織再編をする旨や、存続会社等の商号、住所を通知しなければなりません。
しかし、上記のとおり、簡易組織再編や略式組織再編に該当する場合には、株式買取請求ができないため、この通知も不要です。

6 簡易組織再編・略式組織再編に該当する場合の株主総会決議

上記のとおり、簡易組織再編・略式組織再編に該当する場合には、株主総会決議が不要です。
しかし、簡易組織再編に該当するかどうかについては、資産額を基準に判断されるものであるため、資産額に変動があれば簡易組織再編に該当するかどうか、速やかに判断できない場合もあります。
また、簡易組織再編・略式組織再編に該当する場合であっても、組織再編行為が会社にとって重要度が高い場合もあります。
このような場合、簡易組織再編・略式組織再編に該当する場合であっても、株主総会決議を実施したいと考えることがあり得ます。

このような場合に株主総会決議を実施することができるかどうかは、条文上明らかではありません。
しかし、このような場合も株主総会決議を実施することができると解されています。
株主総会を実施した場合には、簡易組織再編・略式組織再編の手続きにはよらず、原則どおりの手続きが必要になります。
このため、簡易組織再編・略式組織再編に該当する場合であっても、念のために、株主総会決議を実施して原則どおりの手続きをすることができます。

Category:M&A

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