自己都合で退職する従業員が会社都合退職とすることを希望しています。これを受け入れてもよいでしょうか。

1 背景

自己都合退職の場合であるにもかかわらず、退職する従業員から、会社都合退職にしてもらいたいと求められるケースがあるようです。
これは、以下のように、自己都合退職よりも会社都合退職の方が従業員にとって失業保険の受給額や受給条件が有利であるからです。

自己都合退職の場合、申し込みをしてから7日間が経過してから3か月後に給付が開始されます。
支給期間は、雇用保険の被保険者であった期間と退職時の年齢により、90日間以上150日間以下です。
会社都合退職の場合、申し込みをしてから7日間が経過してから給付が開始されます。
会社都合の場合、自己都合退職よりも早く支給がされます。
また、支給期間は、雇用保険の被保険者であった期間と退職時の年齢により、90日間以上330日間以下です。
会社都合の場合、自己都合退職よりも長い期間、給付されます。

このように自己都合退職よりも会社都合退職の方が従業員にとって有利であるので、会社都合退職とできないか、という相談が従業員から会社にされることがあります。

2 自己都合退職と会社都合退職とは

自己都合退職とは、「自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合」と定義されます(雇用保険法331項)。

他方、会社都合退職の場合は、以下の事由のような事業主側の事情に該当する場合をいい、特定受給資格者として上記のように有利な条件で受給できます(法232項、施行規則35条、36条参照)。

①倒産する場合、②事業所が廃止する場合、③事業所の移転により通勤困難となる場合、④労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違する場合、⑤賃金(退職手当を除く。)の一定額が支払期日までに支払われない場合、⑥事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていない場合、⑦事業主又は当該事業主に雇用される労働者から就業環境が著しく害されるような言動(セクハラ・パワハラ等)を受けた場合、⑧退職勧奨を受けた場合、⑨事業所の業務が法令に違反した場合など、事業主側の事情によって退職することになった場合に、会社都合退職になります。

3 会社のデメリット①(不正な受給となること)

自己都合退職であるにもかかわらず会社都合退職とすることは、事実を偽るものであり、その従業員の受給は不正受給です。
違法な受給をした従業員は、不正に受給した給付金を返還しなければならず、さらに受給した失業給付金の2倍相当の金額の納付を命じられることがあります(法10条の41項)。

この支払は、会社も連帯して納付を命じられることがあります。
このように不正受給となり、会社も連帯して納付しなければならなくなる場合があります。

また、違法な受給であるため、詐欺罪として処罰対象となることもあり得ます。

4 会社のデメリット②(助成金が得られないこと)

キャリアアップ助成金や、トライアル助成金などの雇用促進を目的とした助成金は、会社都合の解雇等がある場合には受給できなかったり、減額されたりします。
このように会社都合とすると、助成金が得られないデメリットがあります。

5 会社のデメリット③(退職理由でトラブルを生じるおそれがあること)

会社都合という離職票の退職理由であることを踏まえて、従業員が退職手続きに違法があるなどと主張することが想定されます。
会社都合という離職票を証拠として、退職が無効である、解雇予告の支払義務が生じる、損害賠償義務が生じる、などと主張されるおそれもあります。

6 結論

以上のとおり、会社都合とする要件に該当しない場合には、従業員の申し出は不当なものであり、会社に不利益なので応じるべきではありません。

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