当社は、従業員採用の際、身元保証契約を締結しています。このたび、従業員の過失によって損害を被りましたが、従業員の身元保証人に対して、どのくらいの賠償が認められるでしょうか。

最長でも契約から5年以内の損害に限られますが、過失の場合、全額賠償のケースは少なく、20%~70%の賠償が認められるケースが多いようです。
なお、身元保証人が共同して不法行為を行っていたと同視できる場合は、全額賠償が認められることがあります。

解説

身元保証契約書には、「本人(保証される従業員)が何らかの損害を会社に与えた際、身元保証人が連帯して損害額を賠償します。」と記載されているため、会社は損害の全額を請求できると考えている経営者がいるかもしれません。
しかし、身元保証人の責任は、永続的で広い範囲に及ぶため、予想できなかったような大きな責任を負うことになることもあります。

そのため、身元保証法(参考5)は、保証期間を最長5年に制限しています(1条、2条)。
また、保証責任の範囲も、以下を含めた一切の事情を斟酌して判断するとしています(5条)。
・ 使用者の従業員に対する監督
・ 身元保証をした経緯
・ 従業員の業務内容

一般的には、過失の場合、全額賠償のケースは少なく、20%~70%の賠償が認められるケースが多いです。具体的には、以下のようなケースで、以下の程度の責任が認められています。

  1. 従業員が集金した工事代金等を着服、横領したため、その親族に、「再び同様の行為をしたりした場合等には、連帯して既発生の損害金3506万1830円の支払いをすること」を約束させていたところ、その後再び工事代金を着服、横領したケース
    身元保証人らの年収の状況や、本人が退職金を放棄したことなどを斟酌して、身元保証人に連帯して700万円を弁償すべき責任を認めました。

  2. 農業協同組合の元職員による水増し請求等に関するケース
    従業員が負うべき損害賠償債務は、大部分が故意によるものではなく、過失によるものであることからすれば、身元保証人らが負担すべき損害は、10%程度が相当として、身元保証人らに連帯して1560万円を弁償すべき責任を認めました。

  3. 信用金庫のATM機の現金の管理をしている従業員が、現金を抜き取っていたケース
    会社が現金のチェックを毎日行っていなかったために発覚が遅れた点で、会社の現金等の管理体制にも落ち度があったとして、身元保証の責任は会社の損害の50%にとどめるのが相当であるとして、身元保証人らに連帯して55万円を弁償すべき責任を認めました。

もっとも、身元保証人の責任が限定されるのは、全額請求を認めることが公平の観点から酷であるためですから、身元保証人が共同不法行為者的地位に立つときは、減額を受けることはできません(参考4)。

参考

  1. 福岡高裁平成18年11月9日判決
  2. 旭川地裁平成18年6月6日判決
  3. 東京地裁平成5年11月19日判決
  4. 秋田地裁大館支部昭和49年10月25日判決
  5. 「身元保証ニ関スル法律」を現代用語化したもの

第1条

引受、保証その他名称のいかんを問わず、期間を定めずして被用者の行為により使用者の受ける損害を賠償することを約する身元保証契約は、その成立の日より3年間その効力を有する。但し、商工業見習者の身元保証契約についてはこれを5年とする。

第2条

  1. 身元保証契約の期間は5年を超えることができない。もしこれより長い期間を定めるときは、その期間はこれを5年に短縮する。
  2. 身元保証契約はこれを更新することができる。但し、その期間は更新の時より5年を超えることができない。

第3条

使用者は、以下の場合においては、遅滞なく身元保証人に通知しなければならない。

一 被用者に業務上不適任又は不誠実な事跡があって、そのために身元保証人の責任を惹起
  するおそれがあることを知ったとき
二 被用者の任務又は任地を変更し、そのために身元保証人の責任を加重し又はその監督を
  困難にさせたとき

第4条

身元保証人が前条の通知を受けたときは、将来に向かって契約の解除をすることができる。
身元保証人自ら前条第一号及び第二号の事実があることを知ったときも同様とする。

第5条

裁判所は、身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるについては、被用者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事由及びこれをするにあたり用いた注意の程度、被用者の任務又は身上の変化その他一切の事情を斟酌する

第6条

本法の規定に反する特約で身元保証人に不利益なものは、すべてこれを無効とする。

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