当社では、当社が運営するウエブページに、誰でも自由に写真や動画を投稿・閲覧できるようにしようと企画しています。どのようなことに注意すべきでしょうか。

自由に投稿される写真や動画の中には、猥せつ、児童ポルノ、名誉毀損、著作権侵害など、違法と評価されるものである場合があります。御社が単に公表する場所を提供しているだけであったとしても、違法なコンテンツが掲載されていると認識しながらこれを放置していると、法的責任を負うことになりかねません。
違法なコンテンツか否かの評価は難しいこともあるので、投稿の利用規約に、「当社は、当社の裁量によって、好ましくないコンテンツを削除する場合があります。」という趣旨のルールを設け、不適切なものは削除していくのが無難です。ただし、このような運用はコストを伴うのでその点も検討されるべきでしょう。

解説

掲示板における名誉毀損や、動画サイトでの著作権侵害の問題は以前からありましたが、最近ではリベンジポルノなど、様々な態様の違法コンテンツの掲載が問題になっています。
投稿された写真や動画が違法なものであれば、投稿者がその違法行為に基づく責任を負うのは当然です。
投稿者ではない、「場」を提供する投稿サイトの運営者も、以下に掲げた裁判例が言うように、漫然と違法行為を放置し、サイト運営者自身が違法行為を行っていると評価された場合、被害者から民事上の差止、損害賠償、名誉回復措置などを求められ、或は、刑事責任を追求される可能性があります。
写真や動画を投稿・閲覧できるサイトの開設・運用にあたっては、利用者に対して他人の権利を侵害することのないように注意喚起を行い、権利侵害の通告を受けた場合には調査を行い、権利侵害が明らかなコンテンツは速やかに削除する管理体制を構築し、そのような運用を徹底するべきです。更に、違法なコンテンツか否かの評価は難しいこともあるので、実務的な対策としては、投稿の利用規約に、「当社は、当社の裁量によって、好ましくないコンテンツを削除する場合があります。」という趣旨のルールを設け、御社の裁量によって、柔軟な対応ができるようにしておくことをお勧めします。

2ちゃんねる vs 動物病院事件(東京地裁平成14年6月26日)

「被告は,遅くとも本件掲示板において他人の名誉を毀損する発言がなされたことを知り,又は,知り得た場合には,直ちに削除するなどの措置を講ずべき条理上の義務を負っているものというべきである。ウ この点につき,被告は,本件掲示板における発言の公共性,公益目的,真実性等が明らかでない場合には,削除義務を負わないと主張する。ところで,事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,上記行為には違法性がなく,仮に上記事実が真実であることの証明がないときにも,行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定され,また,ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら逸脱したものでない限り,上記行為は違法性を欠くものとされ,上記意見ないし論評の前提としている事実が真実であることの証明がないときにも,行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定されると解されている(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804ページ参照。以下,合わせて「真実性の抗弁,相当性の抗弁」という。)。被告の主張は,被告において上記の真実性の抗弁,相当性の抗弁について主張・立証責任を負うことはなく,むしろ原告らにおいて反対の事実を主張・立証することを要求するものと解される。しかしながら,本件掲示板における発言によって名誉権等の権利を侵害された者は,前記のとおり,被告が,利用者のIPアドレス等の接続情報を原則として保存していないから,当該発言者を特定して責任を追及することが事実上不可能であり,しかも,被告が定めた削除ガイドラインもあいまい,不明確であり,また,他に本件掲示板において違法な発言を防止するための適切な措置を講じているものとも認められないから,設置・運営・管理している被告の責任を追及するほかないのであって,このような被告を相手方とする訴訟において,発言の公共性,目的の公益性及び真実性が存在しないことを削除を求める者が立証しない限り削除を請求できないのでは,被害者が被害の回復を図る方途が著しく狭められ,公平を失する結果となる。 このことからすれば,本件において,本件各発言に関する真実性の抗弁,相当性の抗弁についての主張・立証責任は,管理者である被告に存するものと解すべきであり,本件各発言の公共性,公益目的,真実性等が明らかではないことを理由に,削除義務の負担を免れることはできないというべきである。」

2ちゃんねる vs 小学館事件(東京高判平17年3月3日判時1893号126頁)

「インターネット上においてだれもが匿名で書き込みが可能な掲示板を開設し運営する者は,著作権侵害となるような書き込みをしないよう,適切な注意事項を適宜な方法で案内するなどの事前の対策を講じるだけでなく,著作権侵害となる書き込みがあった際には,これに対し適切な是正措置を速やかに取る態勢で臨むべき義務がある。掲示板運営者は,少なくとも,著作権者等から著作権侵害の事実の指摘を受けた場合には,可能ならば発言者に対してその点に関する照会をし,更には,著作権侵害であることが極めて明白なときには当該発言を直ちに削除するなど,速やかにこれに対処すべきものである。」。

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