会計と税務の基本的思考

会計的思考

ある企業の一定期間における収益と費用を適切に計算して正しい利益を算定します。この目的からすれば,どのように計算するか(会計ルール)は,あくまでその企業の状況を適切に反映するかどうかで決められるべきです。計算にはいろいろな判断が伴いますが,判断に当たっては,一般に利益は少ないほうの判断を採用すべきです(保守主義)。

例えば,回収が難しいと判断される貸付債権については,保守的にどんどん損失処理する方が,望ましいということになります。

税務的思考

一定期間における益金(収益)と損金(費用)を適切に計算して正しい所得(利益)を算定し,これに対して課税します。この目的からすれば,どのように計算するかは,企業が勝手に決めたのでは公平でないので,税務ルール(税務法令・通達)を作り,企業はそれに従うことになります。

企業が税務ルールとは異なるルールで決算を行って利益を出しても,それ自体は問題ありません。なぜなら,法人税の申告書で会社が計算した利益を税務ルールで計算した所得に計算しなおして(申告調整)税金を納めてくれれば同じことだからです。

計算にはいろいろな判断が伴いますが,税務当局とのトラブルを避けようとすると,主観面より客観面を重視した判断,所得が大きくなるほうの判断をする傾向にあります。

例えば,売掛金の回収が難しいから経理上は損失処理したものの,税務ルールに照らすとそれが損金として認められないリスクを否定できないので,法人税の申告書ではその損失はないものとして,調整することがあります。

なお,法人税申告書は「別表1」「別表4」など多数の別表から構成されます。よって,申告書での調整計算を「別表調整」ということも多いです。

ちなみに,この会計と税務の調整によって生じる利益と税額のアンバランスを経理上で反映させる会計処理,これが税効果会計です。

実務上の留意点

特定の企業が,真にその企業の実情にあったオリジナリティあふれる会計ルールに従って収益や費用を計算すれば,ある意味で理想かもしれません。しかし,そのオリジナリティが過ぎれば,企業によってバラバラな決算になってしまいます。

そこで,会計ルールはある程度のオリジナリティはあっても,全体として一般に受け入れられるような公正妥当なものでなければなりません。

ところで,実務では長い間税務ルールとほとんど一致するやり方で経理処理が行われてきました。なぜなら,税務ルールに従って経理処理すれば,そのルールは会計と目的は違っても一応公正妥当であるし,何より税務ルールとは異なる処理をすれば,法人税の申告書で調整を行わなければならず,また,現場サイドでは計算経済性の問題もありました。

税務ルールとは異なる処理をすれば,法人税の申告書で調整がされるため,会計用と税務用の「二重管理」をするのに多くの負担がかかるからです。

とはいえ,やはり会計と税務の目的は違うわけで,会計ルールも一般に公正妥当な範囲であれば,それぞれ企業の特性や実情に応じて利益を算定すべきです。しかも,ITの急速な発達により,計算経済性の(少なくともハード面の)問題はかなり解決されています。とすれば,法人税の申告書できちんと調整ができていれば,税務ルールべったりの会計をする必然性はないということになります。

平成21年3月

Category:ソフトウェアと経理