ストック・オプションの課税関係

その1

ストック・オプションとは新株予約権の一種です。
よって、新株予約権はすべてストック・オプションではありません。
では、ストック・オプションは、ストック・オプション以外の新株予約権とどう違うのでしょうか。
一般的には、役員や従業員に対するインセンティブ目的(いっぱい働いて会社の株価が上がればドカーンともうかりますからがんばってね!・・という目的)で発行される新株予約権をストック・オプションと言っています。

その2

ストック・オプションとは会社法に基づいて発行されます。
ストック・オプションのうち、一定の要件(税制適格要件)を満たすものについて税務上のメリットを与えるのが税制適格ストック・オプションというものです。
つまり、すべてのストック・オプションが税制適格ストック・オプションではありません。
ですから、税制適格要件を満たさないとストック・オプションが発行できないと考えるのは誤解です。

その3

 ストックオプションの課税関係
 ストックオプションには、それが付与され、権利行使され、更に権利行使によって取得された株式が売却されるという段階があり、それぞれに経済的な利益を考えることができますが、現在のところ、ストックオプションが付与されたこと自体は、所得として認識されません。
所得税法は、ストックオプションに基づいて生じたこれらの利益を、特定の所得区分にはっきりと振り分けていません。よって、どの所得区分に当たるのかは、所得税法の解釈によって決まります。
付与された者が発行会社の役員や従業員である場合、ストックオプションの権利行使によって生じた経済的な利益、すなわち権利行使によって取得した当該株式の時価から取得価額(付与価格プラス権利行使価格)を差し引いた金額は、原則として、給与課税の対象になるとともに、取得した株式を売却したときに株式の譲渡所得として課税されます(最判平成17年1月25日)。
ストックオプションを付与された者が、弁護士やコンサルタントなど、発行会社との関係で給与を受け取る立場にない場合、ストックオプションの権利行使による利益は、事業所得となり、取得した株式を売却したときに株式の譲渡所得として課税されます。
これらの場合には、権利行使時に取得した株式を売却せず、その後株価が低下した場合には、権利行使時の高い株価を基準に課税される反面、低下した株価による株式売却を迫られることもあります。

その4

税制適格ストックオプション Quolified stock option
税制適格ストックオプションは、無償で交付されることや、権利行使期間がストックオプション発行に関する株主総会特別決議(付与決議)の日から2年以降10年以内であること、譲渡禁止であること、権利行使後の株式は証券会社などの金融機関が保管することなど、インセンティブ報酬としての実質を持つストックオプションを指します(租税特別措置法29条の2)。
税制適格ストックオプションについては、年間の権利行使価額が1200万円までの範囲について、権利行使によって株式を取得した時点では、権利行使によって取得した株式の時価と当該株式の取得原価の差額について所得税が課税されず、株式を売却したときに生じるキャピタルゲインに対して譲渡所得課税がなされます。
税制適格要件の詳細は以下のとおりです。
a 付与対象者が下記の者であること(ただし、大口株主(未公開会社の場合1/3超)及び大口株主の特別関係者を除く。)
・取締役、執行役及び従業員
・議決権の50%超を保有する子会社の取締役、執行役及び従業員
b 無償で発行されたものであること
c 新株予約権割当契約において次の要件が定められていること
・年間(暦年)権利行使可能額が1,200万円までであること
・譲渡が禁止されていること
・権利行使時の新株の発行又は株式の移転が会社法に定める手続に基づいて行われること
・権利行使可能期間が付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日までであること
・付与契約締結日の時価以上の権利行使価額が定められていること
・権利行使により取得した株式について発行会社と証券会社又は信託銀行との間で一定の管理信託契約を締結し、当該契約に従い一定の保管の委託又は管理等信託がされること
d 権利行使時に会社に対して誓約書等の提出をすること(権利者が、新株予約権を権利行使する際、新株予約権の付与決議の日において発行会社の大口株主及び大口株主の特別関係者に該当しないことを誓約した書面・新株予約権の行使日の属する年における当該権利者の他の新株予約権の権利行使の有無(他の権利行使があった場合には、当該行使に係る権利行使価額及びその行使年月日)を記載した書面を発行会社に提出するともに、発行会社は当該書面を保存すること(租特法第29条の2第3項4項)
なお、発行会社は、新株予約権等の付与に関する法定調書を、その付与をした日の属する年の翌年1月31日までに、税務署長に提出していること (租特法第29条の2第5項7項)が必要となります。

その5

税制適格オプションの使い勝手の悪さへの対応(非有利発行・非役務対価型新株予約権のストック・オプションとしての活用)
親会社,未上場会社の発行済み株式の3分の1超を保有する株主(大口株主),特許を提供しているが役員となっていないファウンダー,出資だけでなく様々な支援を行うエンジェル,および顧問や請負の形態でベンチャー企業を支援する外部の専門家は,税制適格ストック・オプションの付与対象者となることができません。
そこで、税制非適格でありながら、税制適格と同じ結果になるストック・オプションはないものか?が検討されるようになりました。
もともと証券市場で一般投資家向けに発行されるストック・オプションは給与所得の範疇ではありません。そうすると、そのような役務対価性のない有償のストック・オプションであれば、給与課税の範疇外となり、税制適格同様のキャピタルゲイン課税となると考えられるようになりました。
役務対価性がないことは、モンテカルロシュミレーション、二項モデル、ブラックショールズモデルなどによって公正に評価された付与価格(非有利発行・非役務対価型)に相当する現金を対価とすることによって担保します。このため、役務対価性のないストック・オプションの場合、その権利行使時には課税されず,権利行使によって取得した株式を売却したときに売却価格と権利行使価格の差額に対して譲渡所得課税がなされることになります。
このような評価モデルが要素として用いる指数のうち,任意に設定できる項目は,権利行使価格と権利行使期間です。
権利行使価格を現在の株価よりも高く設定し,かつ,権利行使期間を短縮することによって,オプション価格をより低廉な金額とすることができます。例えば、以下のとおり。
① 原資産価格(S)   20,000 20,000
② オプションの権利行使価格(K) 20,000 40,000
③ 権利行使期間(t)   10年 4年
④ 見積株価変動率(σ)   60% 60%
⑤ 無リスクの利子率(割引率r) 1% 1%
⑥ ③の期間における見積配当額(D) 0 0
オプション価格 10,200円 2,730円

ブラック・ショールズ式は,プレーンバニラ(そうでないものは「エキゾチック」)と呼ばれるような単純なオプションを前提としています。さらに、権利失効に関する条件を設計することによって,権利行使が予想されるオプション数を引き下げることによっても,ストック・オプションの公正な価額を引き下げることもできます。

例:新株予約権(有償ストックオプション)の発行に関するお知らせhttp://www.softbank.co.jp/ja/news/press/2010/20100729_02/
2010年7月29日 SoftBank
・本新株予約権1個あたり金2,900円 1個あたり付与株式数100株
・新株予約権の行使の条件
下記ア及びイ並びにウに掲げる条件が全て満たされた場合
ア 当社が金融商品取引法に基づき提出した有価証券報告書に記載された平成22年3月期及び平成23年3月期並びに平成24年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書におけるフリー・キャッシュ・フローの合計額が、1兆円を超えること。
イ 当社が金融商品取引法に基づき提出した有価証券報告書に記載された平成24年3月期の連結貸借対照表における純有利子負債の金額が0.97兆円未満であること。
ウ 当社が金融商品取引法に基づき提出した有価証券報告書に記載された平成23年3月期及び平成24年3月期の連結損益計算書における営業利益の合計額が、1.1兆円を超えること。

注:・ 非役務型新株予約権は、募集新株の発行手続と同様に、発行決議の取締役会では、新株予約権の付与を受ける取締役は特別利害関係取締役となり、役務提供型の場合には、報酬決議(総会)によって承認されているので非該当となります。

Category:ストックオプション , 会社法