損害賠償の制限条項(Limitation of Liability)はどのような場合に、どのように定めるべきでしょうか。

以下の契約類型などでは、損害額が膨大なものとなることが想定され、また、アメリカなどにおいては、懲罰的損害賠償によって、実損害を超える多額の損害賠償義務を負う場合もあります。このような損害賠償義務は、会社の事業継続に重大な影響を及ぼす危険があることから、これを回避するため、損害賠償の制限条項が置かれることがあります。

契約類型

損害賠償義務を負う会社

損害の例

システム開発契約

システムベンダ(開発者)

開発遅延によりユーザが取引の機会等を失ったことによる損害(逸失利益)

ソフトウェア販売・ライセンス契約

ソフトウェア会社(売主・ライセンサー)

ソフトウェア誤作動による損害

コンサルティング契約・アドバイザリー契約

コンサルタント・アドバイザー

指導失敗の際の損害

秘密保持契約(NDA)

秘密情報の受領者

情報漏洩の場合の提供者の損害

損害賠償の制限の仕方:「範囲」の制限と「額」の制限

「損害賠償の制限」といっても、その制限の仕方としては以下の2つがあります。誤解を恐れずにいえば、「範囲」の制限はいわば損害の「質」による制限、「額」の制限はいわば「量」の制限ということができます。

 (1)「範囲」の制限

損害を生じた原因、内容又は関係等によって損害賠償を制限するという定め方です。「特別損害」「間接損害」「付随的損害」「派生的損害」といった用語を使用するものが多いですが、いずれの損害もその範囲は絶対的なものではありません(日本の民法上、特別損害については規定がありますが、「特別の事情によって生じた損害」と定めるにすぎません)。具体的な損害発生原因や損害の内容が想定される場合は、可能な限り具体的に定めるとよいでしょう。

 - including, but not limited to, damages for loss of revenue or profit

 ―収入又は利益の逸失(逸失利益)による損害を含むが、これに限られない

(2)「額」の制限

損害賠償義務を定める上限を定める("キャップをはめる"ということもあります)という制限の仕方です。
例としては、「本契約に基づきAがBに支払った額を限度として」といったものが一般的です。また、想定される損害額に見合った一定の上限額を定めるという規定もあります。

規定例(シンプルなもの)

(1)  In no event shall either party be liable to the other Party for any special, indirect, consequential or incidental damages.
(2)  A's maximum liability to B shall in any event be limited to the total amount paid by B to A under this Agreement.

(1) いかなる場合も、各当事者は、他方当事者に対し、特別、間接的、派生的又は付随的損害について、責任を負わないものとする。
(2) AのBに対する責任限度額は、いかなる場合も、本契約下でBがAに対して支払った総額に制限されるものとする。 

注意点

ただし、自社に一方的に有利な規定を定めればよいというものではありません。各国の法令により、条項自体が無効とされるリスクがあったり(例:日本の消費者契約法上、悪意・重過失の場合の免責を認める条項)、仮に有効であったとしても、後に裁判で当該条項の適用範囲が制限されるリスクがあります。ご注意ください。

補足―損害賠償の範囲の拡大

損害賠償の制限の一方で、上記のような損害を被るおそれのある会社にとっては、一切の損害を賠償できるとしておきたいところです。しかし、弁護士費用については、基本的に損害賠償請求の対象に含まれません。そこで、以下のような規定を置くことが考えられます。

A and B shall be liable to the other party for any damages,costs,and reasonable attorneys' fees.

A及びBは、他方当事者に対し、あらゆる損害、費用及び合理的な弁護士費用を賠償する義務を負うものとする。

Category:契約 , 英文契約書

TAGS:英文契約書