当社が締結しようとしている契約書案にいわゆる完全合意条項が含まれているのですが、この条項にはどのような意味があるのでしょうか。
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一般的には、「契約書に書かれていない内容に効力を認めない」という合意を意味し、日本法の下でも一定の効力が認められます。
解説
第〇条(完全合意)
本契約書は、本契約に含まれる対象事項に関する当事者の完全かつ唯一の合意を構成し、当事者間に存在するすべての従前の合意は効力を失うものとする。このような条項を「完全合意条項(Entire Agreement)」といいます。契約書に書かれていない内容(事前の合意、交渉の経過など)に効力を認めないという合意です。
これはもともと英米法で採用されていたもので、完全合意条項を置くことで、契約解釈において、契約交渉時に締結した覚書などを考慮されることを防ぐことができるというものです。完全合意条項は、日本法の下では多少意味合いが変わる場合があるものの、その効力は認められています。裁判所は過去の裁判例で、完全合意条項の含まれる契約に関して、「本契約の解釈にあたっては、契約書以外の外部の証拠によって、各条項の意味内容を変更したり、補充したりすることはできず、専ら各条項の文言のみに基づいて当事者の意思を確定しなければならない。」と述べています(※1)。また別の裁判例では、契約書に書かれていない合意の存在を否定する理由の1つとして、完全合意条項があることを挙げています(※2)
裁判所が判断した数が少ないこともあって、日本の裁判所が認めている完全合意条項の効力がどのようなものであるかは必ずしも明らかではありません。しかし、少なくとも完全合意条項の存在によって契約書に書かれていない合意内容の存在を主張することのハードルは一層高くなるものと思われます。
いわゆる「別途協議条項」(「契約解釈に疑義が生じた場合は当事者間で別途協議する。」といった内容の条項)を置くことが多い日本の契約書にも、完全合意条項が盛り込まれている場合があります。しかし一般的に契約書自体の分量が少なく、外部資料から解釈を補充する傾向の強い日本の契約書に完全合意条項を盛り込むことには、注意が必要です。
参考
※1 東京地裁平成7年12月13日判決
※2 東京地裁平成18年12月25日判決
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