ネットリスク

講演情報
インターネットに関するいくつかの法令を紹介することで,ネット利用者および事業者により安全で快適にインターネットを利用してもらうことを目指す。

【講演対象】 インターネットを利用する一般ユーザーおよびネット関連の事業を行う者
【講演時期】 2001年11月
【講演概要】

1.不正アクセス禁止法

◎同法の目的

  • 不正アクセス行為(ネットワークそのものへの侵害行為、及びネットワークを利用した詐欺等の違法行為)の禁止。
  • 被害を受けたアクセス管理者に対する防御措置の要求及び行政によるその援助による通信秩序維持。

◎禁止行為の具体例

  • 他人のID・PWを入力して、アクセス制御機能による利用制限を解除して、利用できる状態にさせる(3-2-1)。
  • いわゆるセキュリティーホールへの攻撃。
  • これらを助長する行為=ID・PWの漏洩行為などとなっており、違反した場合の罰則は、不正アクセスについては1年以下の懲役又は50万円以下の罰金、ID・PWの漏洩行為は30万円以下の罰金とされています。

◎具体例

千葉県警ハイテク犯罪対策室と木更津署が、12月3日、静岡県伊東市に住む中学1年の少年(13)を、不正アクセス禁止法違反と電子計算機損壊等業務妨害容疑で君津児童相談所に通告しました。この少年は、格闘ゲームのサイトに登録した千葉県に住む男性のメールアドレスからのIDとパスワードを割り出して、それを無断で使って100回以上もそのゲームサイトにアクセスし、ゲームのデータを書き換えるなどしたという疑いがもたれているということです。
この件は、ゲームが正常に作動しなくなるなどの異常が生じ、アクセス記録などから少年による不正アクセスが浮上したということです。

2. オンラインマーク

◎通信販売事業者が実在することをWeb上で証明するものとしては、日本商工会議所で運営しているオンラインマーク(Online shopping Trust マーク)があります。
このマークは、インターネットショッピングの事故を防止するために、商工会議所が通信事業者の事業所を実際に訪問してその事業所が実在することを確認し、かつ、ホームページ上の表記が通信販売に関する法令を遵守しているかを審査して使用を許可する制度です。但し、この制度は、販売される商品やサービスの品質を保証するものではありません。
このマークの画像には、「透かし」として認証情報が埋め込まれていて、このマークを正式に取得していない者が勝手にコピーして貼り付けた場合には、不正表示のメッセージが表示されるようになっています。

3. 電子消費者契約法

◎正式名称は、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」といい、平成13年6月22日に成立、12月25日施行されます。この法律は、消費者がパソコンの操作ミスによって損害を蒙らないようにすることによって、電子取引の利用を促進することを狙いとしています。内容は、電子取引の申込画面に「確認措置」がない限り、消費者は重大な過失があっても錯誤無効を主張できるというものです。逆に言えば、確認措置がとられているときは操作ミスによる錯誤無効は主張できなくなります。

4. 不正競争防止法を一部改正する法律

◎施行期日

平成13年12月25日と定められています。

◎法案提出の理由

「近年の経済社会の情報化の進展にかんがみ、不正の利益を得る目的又は他人に損害を加える目的で他人の特定商品等表示と同一又は類似のドメイン名の権利を取得する等の行為の停止及び予防を請求することが出来るようにする・・・」とされています。

◎内容

  1. 他人の商標と類似のドメイン名の取得・保有・使用を不正競争と認定するということ
  2. 商標権者に差止・損害賠償請求を認めるということ

にあります。
損害賠償の中身は、「ドメイン名の使用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額」とされており、これについての裁判所の考えかたは、他社にサブライセンスしたときの許諾料相当額と考えており、具体的には侵害した企業の売上の5〜6%とする例が多いようです(ミッキーマウス・無線操縦飛行機・セゾン等の事案)。
不正競争防止法違反には、3年以下の懲役、300万円以下の罰金という罰則があります。法人が行った場合、両罰規定によって3億円以下の罰金が並課される。

5. 特定商取引に関する法律

◎訪問販売法から特定商取引法へ

これまで「訪問販売法」と言われてきた法律は、平成13年6月1日より、「特定商取引に関する法律」と名称が変更になりました。インターネットショッピングは、この特定商取引に関する法律にいう「通信販売」に該当します。

◎注意すべき事項

この法律によって、ホームページ上に、

  1. 商品の価格
  2. 支払時期および方法
  3. 引渡し時期
  4. 返品の特約
  5. 事業者の氏名など
  6. 申込みの有効期間
  7. 送料や付帯費用の金額

などを表示しなければなりません。
また、誇大広告などの禁止が定められており、違反に対しては100万円以下の罰金等の制裁があります。産業経済省は、同法の14条にいう「経済産業省令」の中身として、10月24日に「インターネット通販における『意に反して契約の申込みをさせようとする行為』にかかるガイドライン」を作成しています。
ガイドライン(経済産業省令16条1号)は、「申込となることの表示」について、

  1. 最終的な申込みボタンに「送信」などという表示がなされているだけで、申込みを明らかにする表示がない
  2. 申込みボタンに近接して「プレゼント」などと表示されていて有償でないかのような誤解を与えるようなもの

は、違法の虞があるとしています。
また、「確認・訂正機会の提供」について、申込最終段階の画面上において、

  1. 申込内容が表示されず、これを確認するための手段が提供されていない
  2. 訂正する手段が提供されていない
  3. あらかじめ同一商品を複数申し込むように設定してあるようなもの

は違法の虞があるとされています。

6. インターネット通販のトラブル

◎トラブル例

インターネット通信販売で多いのは、

  1. 商品が届かない
  2. 類似品だった
  3. 同じ物が複数届いた
  4. プライバシー情報が流出し類似業者から多数のダイレクトメールが届いた

という業者に不当性が認められる場合も多いのですが、「商品が思っていたイメージと違う。」というトラブルも上位を占めています。これは、Web上のイメージと現物とのギャップですが、個人の感じ方の問題でもあるので、Web上での見せ方には注意が必要です。

◎注意点

インターネット通信販売には、当然にはクーリングオフ制度は適用されません。訪問販売や電話勧誘販売の場合には、購入意思が曖昧なまま業者側に押し切られるように契約を締結してしまうことがあるためにクーリングオフができることになっていますが、通信販売の場合には、購入意思が明らかだというのが理由です。しかし、現に顧客からの返品の申し出にかかるトラブルが多いことからすれば、返品に関するルールを作って明示したほうがよいでしょう。

7. 消費者契約法

◎概要

「消費者契約法」は、消費者と事業者との、「情報の質及び量並び交渉力の格差」を是正することを目的として平成13年4月1日から施行された法律で、

  1. 債務不履行、不法行為、瑕疵担保責任をすべて免除する免責条項。
  2. 解除に伴う損害賠償の予定が平均的損害を超えるものは、超える部分(第9条1項)
  3. 支払期日経過による遅延損害金の予定が年14.6パーセントを超えるものは超える部分(第9条2項)

などを無効とするものです。
いかなる理由があっても、一切その責任は負いませんという条項や法外なキャンセル料を定めている条項のように、消費者の利益を不当に害する条項は無効です。

8. 準拠法と管轄(フランスの法律で米国ヤフーを取り締まれるか。)

◎事件の概要

ヤフー社の英語版競売サイトで、ナチス・ドイツの制服や旗、銃刀などが展示され、競売にかけられていたことに対し、フランスの人権団体などが「人種差別的な商品の展示・販売を禁じた仏国内法にふれる」として訴えを起こし、パリ大審裁判所は平成12年11月、ヤフーに対して、フランスからの同サイトの利用を不可能にする措置をとるよう命令を出すという事件がありました。ヤフー側は、「アクセスのシャットアウトは技術的に不可能である」「仏国内法に基づく裁判所の決定は同社には適用されない」と反論していましたが、結局、今年(平成13年)になって、同社の競売や買い物のサイトなどで旧ナチス・ドイツ、秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)など暴力や憎悪を称賛する団体関連の商品を取り扱うことを禁じるガイドラインを作成しました。
ヤフーは、1月、競売サイトからナチス関連品を自主的に撤去するとともに、品物がガイドラインに照らして問題ないかどうか判別するソフトウエアを使うとともに定期的にサイトを点検する方針で、これまで無料だった競売への出品を、10日からは品物の値段設定に応じて0.2〜2.25ドルの料金を徴収することにしています。

Category:講演情報

その他のニュース

最新ニュース