「憲法と現状の乖離に問題 国防の在り方、今こそ国民的議論を」というコラムを書きました。

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「憲法と現状の乖離に問題 国防の在り方、今こそ国民的議論を」というコラムをフジサンケイビジネスアイに書きました。http://www.innovations-i.com/shien/focus/id/1394.html

現行憲法では、集団的自衛権の行使は許されないと考えるのが通説的な見解です。自衛隊の存在も、制定当時の憲法では予想されていなかった。時の政府が、憲法をそのままにしておいて解釈で現状を変えていくのは立憲主義に反する。現行憲法制定時とは、日本を取り巻く環境は大きく変わり、今後も変わり続けていく。今こそ、将来を見据えて、国民的な議論をし、国防についての方向性を共有すべきだ。ということをそのコラムに書きました。

このブログ出来は、上記コラムの続きで、普段思っていることを書きます。

我が国では、憲法9条についてどう考えるかは、左翼か右翼かのリトマス試験紙のように考えられ、あまりにセンシティブで司法試験の問題にもなりませんでした。多くの国民はこの点について、自分の考えを述べることに躊躇しています。憲法改正を70年間しなかったことによって、国民の間には、改憲に対する恐怖心のようなものがあるようにも思います。
しかし、国防について思考停止していれば、我が国のリスクは大きくなるばかりだと思います。

今、憲法に違反するから自衛隊は解体し、個別的自衛権も行使しないという考え方をする人は少数だと思います。
個別的自衛権は、国を自然人に置き換えて考えると、正当防衛のようなものです。窮迫不正の侵害に対して、自分を守るために必要な限度で反撃することは当然の権利であるとともに、違法なことは許されないというルールを示す行為でもあります。
自衛隊の存在を肯定する人が多数派なのであれば、自衛隊を承認する憲法に改憲するべきです。憲法は、根本的なルールを定めているものですが、社会が根本的に変わればルールも変わるべきです。国連が世界秩序を維持できるだけの力を持っておらず、今後もその見込が低いことから9条の前提とする国際状況は満たされていないと思います。

自衛隊の存在を肯定するとして、集団的自衛権まで行えるとするべきでしょうか?

自民党の憲法改正草案第9条の2(国防軍)の第3項は、「国防軍は、(略)、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動(略)を行うことができる。」として、同Q&Aで、「国防軍は、軍隊である以上、法律の規定に基づいて、武力を行使することは可能であると考えています。また、集団安全保障における制裁行動についても、同様に可能であると考えています。」と解説しています。

私の知人には、自衛隊の元連隊長クラスの人がいますが、「他国の軍隊に護られていながら、窮地に陥った彼らを助けに行けないのでは信頼関係を保てない。」と聞きます。現在の中途半端なルールは妥当でなく、仮に集団的自衛権を認めるのであれば、国際法で認められている範疇の行動はできるようにするべきだと思います。

しかし、私は、日本の軍隊が個別的自衛権の範囲を超えて武力行使することには否定的な国民が多いのではないかと思います。大抵の人は、集団的安全保障が戦争回避を目的としていることは分かるものの、どのような戦争であれ手は出さない方が良いと感じているではないでしょうか。

日本は、歴史的背景から集団的自衛権への参加を強く求められる立場にありませんし、日本の軍事力が強化されていくことは、周辺諸国との緊張を高めるだけでなく、ジョージ・フリードマンが「百年予測」で予言しているように、最終的には米国から敵視され、日米開戦に至る伏線になっていく可能性もあります。
集団的自衛権の行使を一度始めれば、自衛隊の行動範囲と量が膨張する可能性は高いと思います。そのために徴兵制も現実的な課題となります。
現実に戦闘行為を行い、死亡したり、重い障害を抱えたり、PTSDなどの精神的なダメージに苦しむ若者は、「皇族、政治家、富裕層以外の子供たちに限られる」というのでは、軍隊のモラルもモチベーションも維持できず、安易な海外派兵も抑止できないからです。
現代の日本人が、自分の子供や孫が徴兵に行くことを受け入れるとは考えずらいように思います。
また、米国にとって、日本は米国本土と海洋権益を確保する要なので、日本が共同して武力行使しなくても、当面は米国自身の損得勘定に従って日本を守るしかありません。
日本が集団的自衛権を行使する必要性は高いとは言えないと思います。

他方で、日本は日本に対する攻撃に対応する武力は研ぎ澄ます必要があると思います。ミサイルに対する迎撃はもとより、相手国の軍備を破壊することができる戦力が維持されている必要があると思います。

ただ、国防政策を判断するために必要な情報が適切に国民に届いているかは疑問です。物事を判断するためには、十分で正しい情報があり、自由に議論がなされる必要があります。このところから、まずはじめなければならないと思います。

参考:
自民党 憲法改正草案
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
同Q&A
https://www.jimin.jp/policy/pamphlet/pdf/kenpou_qa.pdf

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TAGS:憲法 自衛隊 集団的自衛権 憲法違反 個別的自衛権 合憲 意見 平和主義

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古田利雄>
古田利雄

主にベンチャー企業支援を中心に活動しています。上場ベンチャー企業、トランザクション、NGC、Canbas等の役員もしています。

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