中小企業金融円滑化法の期限到来(今月末・平成25年3月)対策

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中小企業金融円滑化法は、

・金融機関は、中小企業から適式なリスケ(貸出条件の変更)の申し入れに対し、当該企業の格付けを下げずに応じなければならない
・金融機関はコンサルティング機能を発揮して債務者企業を支援するべきである。
という趣旨の時限立法で、「平成の徳政令」ともいわれました(平成21年12月施行)。

その後、2回の延長を経て、今月末に期限が到来します。この間、同法に基づく申入れは40万社/280万件あったそうです。

期限到来とともに、金融機関の貸し渋りや貸しはがしが始まり、多数の企業が倒産するのではないかと懸念する人もいます。


金融庁は、このような不安に応えるため、平成24年11月、「金融担当大臣談話」
-中小企業金融円滑化法の期限到来後の検査・監督の方針等について- を発表しました。
http://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/2012/20121101-1.html

これには、
・金融機関が、貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めるべきということは、円滑化法の期限到来後においても何ら変わらない。
・金融庁は、貸し渋り・貸し剥がしの発生や倒産の増加といった事態が生じないよう促す。
・金融検査マニュアルの貸付条件の変更等を行っても不良債権とならないための要件(注)は恒久措置である。
と書かれています。

このこともあり、実務家の間では、4月1日から突然、貸し渋り、貸し剥がし、金融機関からの強行な債権回収などのような劇的な環境変化
が起こるとは考えられていません。


しかし、全く影響がないかといえば、そのようなことはなく、新聞等でも書かれているように、5~6万件の企業は清算せざるをえないので
はないかという見方が有力です。

なぜならば、金融機関としても、すべての債務者企業に延々とリスケを行うことはできないからです。

銀行は、国際決済銀行は8%、国内銀行でも4%の自己資本比率を維持しなければなりません。

そして、銀行は、格付けの低い債権については、貸し倒れに備えて引当(マイナス資産の計上)を行わなければなりません。
つまり、格付けの低い債権は、銀行の健全性の尺度である自己資本比率を下げることになります。

どのくらい貸し倒れを引き当てなければならないかというと、金利減免や返済猶予を行ったり、3か月以上支払いが遅延している債権(要管
理先)で15%~30%、それ以上支払いが遅延している破たん懸念先で50%~70%とされています。

このため、銀行はいつまでもこのような債権を持っている訳にはいかないのです。


なんとか、約定金利の弁済を行っている会社は、金融機関となるべくコミュニケーションをとって、引き続き協力してもらうことができると
思います。
したがって、経営者としては、約定金利だけは何とか払うようにすべきです。
併せて、経営改善計画を示して正常な貸出先に戻れることを説得し続けます。そうすれば、引き続きリスケに応じてもらえると思われます。


しかし、金利の減免や支払いを遅滞し、リスケに応じてもらえず、結局、法的に期限の利益を失った会社の債務は、以下のようになる可能性があります。
・ 信用保証協会付融資の場合、信用保証協会が代位弁済をして、同協会が債権者となる。
・ サービサー(債権回収会社)に売却されて、サービサーが債権者となる。
・ 同じ金融機関の回収管理部門に移管される。
もしも、現在、金融機関から、「抜本的な経営改善をしなければ支援継続は難しい。」と言われていたら、このような展開になる可能性があ
ります。

まず、こうなっても、慌てたり、投げやりな気持ちになる必要はありません。
なぜならば、一般的な金融機関はこちらが誠実に対応していれば、いきなり強制執行をかけてくるようなことはないからです。

特にサービサーは、バルクセールで債権を購入するので、数年分の金利程度の金額で当該債権を仕入れていることが多く、それをある程度上回る金額で買い取ることができるケースもあります。
例えば、当事務所と取引のあるサービサーが、当該債権を買い取ることができる場合もあります(DPO方式)。
保証協会や地銀などは、任意整理による債務の減免に応じてくれないと思いますが、事実上の長期分割で対応できることもあります。

そのような金融機関対応をしながら、経営の大原則である、本業の利益を少しでも増やすように経営改善を行います。
不採算部門があるときは、当然そのリストラをするべきです。


債権者の債権を強制的に減免する方法としては、民事再生があります。
しかし、民事再生はブランドの毀損が激しいので、あらかじめスポンサーの関与が予定されているような事案(プレパッケージド)でないかぎり、成功確率は低いと言わざるをえません。

実務的に、成功確率が高い方法としては、
1 採算黒字部門と不採算部門がある場合、債権者全員の同意を得たうえで、詐害的にならない会社分割を行う。
2 中小企業再生支援協議会の支援を受ける。
3 簡易裁判所に特定調停を申し立てる。
などがあります。

全銀協の私的整理ガイドラインという選択肢もあるのですが、中小企業には向いていません。
また、上記2はこれまでの処理件数が7年間で3,000件であり、手続のハードルも低くはありません。

実務的な選択肢としては、上記1か3がお勧めできる方法だと思います。
金融機関はコンプライアンスの観点から、私的整理において債務の減免に応じづらい立場にありますが、上記3は、裁判所の関与があるため金融機関も応じやすいのではないかと、弁護士会でも今後の活用を期待しています。

どんな人、企業にも、苦しい時期がありますが、「鶏口となるも牛後となるなかれ」の精神で起業した以上、不屈の根性で這い上がりましょう!!

声をかけて頂ければ、私たちも全身全霊でバックアップします。
「親の会社が潰れたから、子供が学校やめた。」なんてことは私たちが許しません。

参考:

-中小企業金融円滑化法の期限到来後の検査・監督の方針等について- 
http://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/2012/20121101-1.html

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古田利雄

主にベンチャー企業支援を中心に活動しています。上場ベンチャー企業、トランザクション、NGC、Canbas等の役員もしています。

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