選挙違反について

最近の話題

選挙違反について

 

衆議院が解散され、来る12月4日(火)に選挙が公示され、同16日(日)に実施される運びとなりました。

投票価値が違憲状態のままで選挙が行われることは誠に残念だが、公職選挙法に記載されているとおり、今回の選挙が、選挙人の自由に表明する意思によって公明かつ適正に行われ、正しく民意を反映したものになって欲しいと思います。

 

私は、恩師が自民党の顧問弁護団の役員をされていたご縁で、平成4年ころから、数年前まで自民党の顧問弁護団に所属していました。

今月12日に市ヶ谷に越してくる前の事務所は、永田町の自民党本部の隣のビルだったので、選挙関係については、随分沢山の法律相談を行い、また弁護活動を行いました。

また、地方の選対本部で選挙運動に従事されるボランティアの皆さんに対して、どのような行為が選挙違反になるのかを、わかりやすく説明するために冊子やビデオを作成し、そのような教材を使ってセミナーを行ったこともありました。

そこで、適正な選挙が行われることを祈念して、どのような行為が選挙違反になるのか、いくつか説明します。

 

「事前運動」

候補者が選挙運動を行うことができるのは、候補者の届け出をしてから選挙の前日までだけです。候補者の届け出をすることができるのは公示日である12月4日だから、それ以前に選挙委運動を行うと公選法129条違反となり1年以下の禁固等に処せられます(法239条)。

事前運動の主体に制限はないから、候補者とは無関係の人(たとえばこれを読んでる「あなた」)が選挙運動をすれば、この罪に該当します。

「すでに皆全力で遊説しているではないか。」と言われるかもしれないが、今政治家たちがしているのは「政治運動」であって、「選挙運動」ではないということになっています。この二つの違いは、後者が「投票依頼」だということです。「清き一票をお願いします。」とか「誰々さんに投票してください。」とお願いすると選挙運動の範疇に入ります。

もし、身近で政治家や政治家の後援者などが12月3日までに投票依頼行為をしていたら、携帯電話で撮影して警察に持っていくと対応してくれるはずです(通常、警察は選挙妨害したと言われないように、選挙終了後に検挙する)。

 

「戸別訪問」

誰でも、選挙運動として戸別訪問することはできない。候補者が演説会を行うことについて、戸別に告げてまわることは戸別訪問とされ(法138条)、やはり1年以下の禁固等に処せられます(法239条)。

戸別訪問は、なかなか無くなりません。候補者や講演会の人がわざわざ家に来て握手し、「よろしくお願いします。」と言われると、義理堅い日本人は他の候補に投票することにストレスを感じることになるし、静かな暮らしをみだされたと感じる人もいます。

ただ、戸別訪問してはならないというルールなので、知人に路上で声をかけて、或いは、お店に来たお客様に候補者の演説会があることを知らせても該当しません。

 

「文書違反」

候補者にお金があるかどうかで選挙運動の量に差が出ないように、選挙運動に使うことができる文書は法律で定められてものに限定されています。それを超える様式や枚数の文書を使うことはできません(法142条)。

これに違反すると、2年以下の禁固等に処せられます(法243条)。

 

「買収」

しばしば検挙されるのは、選挙運動を手伝うボランティアに対して、活動費としてお金を渡すケースです。候補者と仲のよい人が、自分の会社の従業員に対して勤務時間中(つまり業務中として給与が支払われる時間)に、選挙応援をさせるようなこともこれに当ります。

選挙運動を行う者に対しては、ウグイス嬢などの例外を除いて、報酬をはらうことはできません。交通費等の実費の支払いについても許容される範囲は、選挙管理委員会が詳細に定めています(法197条の2)。

買収に該当すると、3年(候補者等は4年)以下の懲役等に処せられます(法221条)。

 

>当選無効と連座制

候補者が以上に記載したような選挙違反を行って刑に処せられたときは、「当選」が無効になります(法251条)。

候補者が選挙違反に全く関与していなかったとしても、候補者の秘書や候補者等と連絡をとって選挙運動を行う後援会、企業、労働組合、宗教団体、協同組合、町内会、自治会、同窓会などの組織で選挙運動の企画調整を行うようないわゆるリーダー格の人(組織的選挙運動管理者)が買収などの悪質な選挙違反を犯して、罰金や禁固刑に処せられると候補者の当選は無効になり、向こう5年間は当該選挙区から立候補することができなくなります(法251条の2、3)。

連座の適用があると、次の総選挙にも出られないので、一般的には、その候補者の政治生命は終わります。

接戦の選挙区ほど、選挙戦がヒートアップするので、体制の引き締めはとても重要となります。

 

公職選挙法には、このほかにも、公務員の選挙犯罪、人気投票の禁止、飲食物提供の禁止、寄付制限など様々な規制があります。

明るい選挙によって、力強い日本のリーダーが選ばれることを祈念します。

Category:最近の話題

TAGS:選挙違反 公職選挙法 連座制 買収 戸別訪問 文書違反 当選無効

著者
古田利雄>
古田利雄

主にベンチャー企業支援を中心に活動しています。上場ベンチャー企業、トランザクション、NGC、Canbas等の役員もしています。

その他のブログ記事

最新ブログ記事