2009.01.20ストック・オプションにまつわる混乱
3回目のリニューアル版ということで、最初に、ストック・オプションにまつわる誤解や混同などを明らかにしておきたいと思います。細かい説明は本文にて・・・。
【その1】
ストック・オプションとは新株予約権の一種です。
よって、新株予約権はすべてストック・オプションではありません。
では、ストック・オプションは、ストック・オプション以外の新株予約権とどう違うのでしょうか。
一般的には、役員や従業員に対するインセンティブ目的(いっぱい働いて会社の株価が上がればドカーンともうかりますからがんばってね!・・という目的)で発行される新株予約権をストック・オプションと言っているようです。
【その2】
ストック・オプションとは会社法に基づいて発行されます。
ストック・オプションのうち、一定の要件(税制適格要件)を満たすものについて税務上のメリットを与えるのが税制適格ストック・オプションというものです。
つまり、すべてのストック・オプションが税制適格ストック・オプションではありません。
ですから、税制適格要件を満たさないとストック・オプションが発行できないと考えるのは誤解です。
では、なぜこのような誤解が生じるのでしょうか。
ストック・オプションが税制適格になるためには、その発行や割当(付与)の段階で、いくつか重要な要件があるからです。割当(付与)対象者に税務上のメリットを与えようとすると、税制適格要件が制約条件になって、あたかも税制適格要件を満たさないとストック・オプションが発行できないかのような錯覚に陥るからです。
あくまで、ストック・オプションとは会社法に基づいて発行されるのです。
なお、税制適格ストック・オプションの根拠は所得税法ではありません。租税特別措置法です(租税特別措置法第29条の2 特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等)。
【その3】
ストック・オプションの発行価額と権利行使価格は異なります。
発行価額とは、会社が、ストック・オプションを発行して、割当(付与)対象者に割当(付与)するときのお値段です。逆に言えば、割当(付与)対象者が、ストック・オプションを割当(付与)されたときに支払う金額です。つまり、ストック・オプションそれじたいのお値段です。
権利行使価格とは、理論的には、割当(付与)対象者が、ストック・オプションを権利行使(詳しくは本文で)して株式を購入するときに会社に払い込む金額です。逆に言えば、会社が、ストック・オプションを権利行使した被割当(付与)者に株式を与えるときに受け取る金額です。つまり、ストック・オプションで決められた株式を買うお値段です。
では、なぜ混同してしまうのでしょうか。
多くのストック・オプションは、発行価額がゼロ円(無償)になっています。つまり、ストック・オプションを割当(付与)された対象者は、何の出費もいらないわけです。よって、発行価額という観念がないため、とかく権利行使価格と混同してしまうのです。
では、なぜ発行価額が無償のストック・オプションが多いのでしょうか。
「割当ててやるからおカネ払え」というのはある意味で当然ですが、「インセンティブが目的なのになんでおカネ払うのよ」「そもそも権利行使するかしないのかわからないのにおカネを支払うのはどうなのよ」というエモーショナルな問題もあります。実際問題として、ストック・オプションで税務上のメリットを受けられる要件(税制適格要件)のひとつに、「ストック・オプションの発行価額は無償であること」があります。会社が、割当(付与)対象者に税務上のメリットを与えたいときには、税制適格要件を満たすストック・オプションを発行するからです。
【その4】
ストック・オプションは、上場を目指さない会社(株式公開しない会社)でも発行することはできます。
よって、上場を目指さない会社がストック・オプションを発行できないというのは誤解です。
ストック・オプションを発行できることと、その一般的なメリットを十分に享受できるかということとは切り放して考えなければなりません。
多くの人にとって、ストック・オプションの究極のメリットは、ストック・オプションを権利行使して安く取得した株式を、高値で売却することによる売却益です。
株式を売却するということは、買い手が存在し、かつ、売却額が決まってはじめてなしうることです。
上場会社では、市場で株式が取引されるため、この点はほとんど問題ありません。
ただし、株式を上場していない会社では、買い手が相対的に限定されるのと、売却額をいかに決定するかによって、そのメリットが大きく損なわれる可能性があります。
なお、上場を目指さない会社が税制適格ストック・オプションについて検討するのは、やや微妙であると思われます。
なぜなら、ストック・オプションで税務上のメリットを受けられる要件(税制適格要件)に、「ストック・オプションで取得した株式は、証券会社などの金融商品取引業者等に保管の委託または管理等信託をすること」「ストック・オプションで取得した株式の譲渡は、当該金融商品取引業者等への売委託または当該金融商品取引業者等に対する譲渡により行うこと」があるからです。
株式を上場してしない会社が、この要件を満たすのはかなり困難です。
もっとも、(本文で述べますが)ストック・オプションの効果を、「将来株式を安く買うことができる権利」としてとらえ、(安く買った後の)株式の売却益ではないととらえれば、事業承継だとかにも十分に利用できます。
- 2009.05.15【ストック・オプション】ストック・オプションのインパクト
- 2009.05.15【ストック・オプション】ストック・オプションを語る資格、利用する資格
- 2009.01.20【ストック・オプション】ストック・オプションの前フリ
- 2008.04.09【所得税】所得税を知る(その4)・・・株式の譲渡所得
- 2008.03.31【所得税】所得税を知る(その3)・・・各所得の解説
- 2008.02.27【所得税】所得税を知る(その2)・・・総論編
- 2008.02.27【所得税】所得税を知る(その1)・・・サラリーマン編



