前回のブログでは無断売買の話をしましたが,今回は無断売買の実例として野村證券株式無断買付事件(東京地判平成6年8月29日)をご紹介します(先物取引事例ではないです。)。
本件は,X(女性)が野村證券経由で購入した株式の一部について,Xの委託に基づき買い付けたものかどうかが問題となった事案です。
まず,Xは正当に保有していた有価証券を精算したときに,野村證券から精算金と株式の取引明細書を受け取っており,この精算金の金額が問題となった株式購入代金が差し引かれた金額であることを了解していました。この精算金の受領行為がXが本当は委託をしていたことを推測させるのではないか,当初委託がなくても事後的に認めた(追認した)のではないかが問題となったのです。
裁判所は,Xが今まで値下がりした株式についてもクレームをしたことがないこと,そのようなXが今回無断売買の抗議を強くしていたこと,野村證券担当者がXの抗議に対して問題となった株式は優良株であり短期間で売り抜けるから事後承諾をして欲しいと言ってきたのですが,このまま精算金を証券口座に置いておくと同様の手口で使われてしまうことをおそれて上記の精算金をやむなく受け取っていることなどからすれば,精算金の受領という事実をもって,問題となった株式がXの委託に基づくとか事後承諾があったと認めることはできないと判示しました。
ちなみに,Xが野村證券本社にクレームを出したのは,無断売買がなされてからしばらく経ってからのようです。これには理由があったみたいで,担当者から,クレームが出されると自分のクビ問題になるからやめてほしいと懇願され,躊躇したためにクレームが遅れたそうです。
以上により,東京地裁は,本件について,Xの主張を全部認容し,野村證券に対し,Xの請求とおりの金額(約440万円)を支払うよう命ずる判決を出しました。
前回のブログでも書きましたが,無断売買で問題となるのは立証関係です。本件では,精算金の受領が問題となっていますが,他のケースでは無断売買を承諾するような内容の「念書」「確認書」等を書かされていることもありました。日付も遡って書かされたりすることもあります。
十分に理解した上で委託した金融商品について損をするのは自己責任ともなりますが,委託もしていない金融商品について損をするのは納得いかないものです。納得いかない場合には,徹底的に抗議して,不用意に書面を作成しない・追認するようなことを話さないことが重要です。
2011年8月24日
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